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いい嘘


俵万智さんのサラダ記念日。

教科書に載るほどの傑作集。

その中の本の名前にもなったひとつの歌の創作秘話。

"「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日"

これ、元々はサラダじゃなくカレー味の唐揚げだったそう。

しかも七月六日でもなかったそう。

ただ、いいねと言われて自分の日常の中に幸せがあって、それを歌をする時にカレー味の唐揚げよりも、サラダの方が爽やかで歌になりやすいということと

サラダのおいしい季節と言ったら初夏だと。

それが7月っていうのは、サラダっていうのが子音がSでサ行で7月もSでゴロがいい。

かといって、七夕とかにしてしまうと在り来りなので、7月6日にしたという制作秘話がある。

つまり、事実というのはこの場合作品にするには向かない。

だから、真実を伝えるために嘘をつくというのはありだと思う。

こと、作品作りにおいては。

この時の真実っていうのは、この味いいねと好きな人が言ってくれたこと。

そこに幸せを感じたのも真実。

というか本質。

それをカレー味の唐揚げにしろサラダにしろその本質を作品に消化させるために、サラダにして日付を変えたのが作品の嘘。

芸術表現や完成を表したい時には、演出しすぎはやらせやねつ造と言われてしまうが、この嘘はとても感銘を受けた。

詩人らしく非常に好きな1幕だ。

東出さんが自身のYouTubeでこれを語っていらっしゃって、激しく共感した。

嘘は良くないと言われるが、反面こういう使い方なら僕はありだと思う。

誰も傷つけず、時には感動を与える嘘。

信頼の元放たれるそれは嘘という言葉では片付けられない真実がある。

本が改めて好きになった。


サラダ食べたい。



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