見出し画像

エンタメコンテンツ業界で何が起こっているのか(マクロ編)

エンタメ×ブロックチェーンスタートアップのGaudiyでBizDevやってるRicky(田中陸也)です。

現在、フォートナイトを運営するEpicGames VS Appleの話(Apple税問題)で盛り上がってますが、このような「コンテンツホルダー VS プラットフォーマー」の構造は、ゲーム業界に限らずコンテンツ業界全体で起きています。
そしてその背景には、プラットフォーマーに頼らざる追えないエンタメコンテンツ業界全体が抱える課題や現状があると思います。

今回は、「そもそもエンタメコンテンツ業界で何が起きているのか」マクロな現状を書いてみました。IPコンテンツ業界の解像度を高めたい人に読んでもらえると嬉しいです!

僕もまだこの業界は入ったばかりで、いろんな情報に解釈などを入れながら整理したものなので、少しずれてたり読みにくいところがあるかもしれないですがどうぞご勘弁ください!


(1)エンタメコンテンツ業界とは?

エンタメコンテンツ業界とは、IP(Interllectual Propery:知的財産権)をもとにしたコンテンツでビジネス展開する業界です。
大きくわけると、①音楽、②アニメ、③マンガ、④ゲーム の4領域に分けられます。

それぞれの市場規模はこんな感じ。
コンテンツ市場全体では、国内約11兆円(世界で約129兆円)の市場規模がありますが、ここにはTVや新聞といったマスメディア市場なども含まれるため、上記4領域のエンタメコンテンツに絞ると国内約3.7兆円の市場規模があります。

画像1

TwitterでDMいただければ、もう少し詳細な数字が入ったスプレッドシート共有します!

かなり大きな市場ですが、市場自体は概ね停滞気味。市場を形成する業界の構造も、ネット/スマホ/SNS時代になって大きく変化してきています。

(2)業界に起こっている変化

まず業界の構造をシンプルに整理してみました。

画像2

この業界の全ての根元はIP(知的財産)。特に「著作権」がベースになります。そしてこのIPをもとに、音楽・アニメ・マンガ・ゲームのようなコンテンツが生み出されます。(もちろんIPが最初に生まれる時はドラゴンボールが漫画から始まったようにコンテンツとセットです)

そしてそれらコンテンツを、CDやDVDなどの「物理的な媒体」に閉じ込めて、CDショップや本屋などの「流通」を通して販売していたのが、従来のビジネス構造でした。

つまり出版社や音楽レーベルなどのIPコンテンツ企業は、IPを元にした「コンテンツ自体を販売する」というシンプルなビジネスモデルでした。

しかしこれがネット/スマホ/SNS時代に入り、「媒体」と「流通」の部分を中心に大きく構造が変化しています。このあたりは私たちは既に実感していることですが、大きく2つの変化に分けて捉えると構造が理解しやすいです。


1つ目の変化が、「無料コンテンツの流通」です。

画像3

ネットの普及により、海賊版の横行やYouTubeなどへの違法アップロード、著作権的にグレーな二次創作のUGC(User Generated Content)が増加するなど、コンテンツはどんどん無料化されています。

この背景には、コンテンツがデジタル化され情報(=コンテンツ)が複製し放題になったこと。さらにSNSなどを通して共有し放題になったことがあります。

このような状況に対して、コンテンツ業界は「規制」により従来のビジネス構造を守ろうとしてきました。(海賊版やWinnyの取締りなど)。これらは当然重要なことですが、無料化する時代の流れを止めることはできません。


そしてそのような流れの中生まれてきた2つ目の構造変化が有料プラットフォーマーの登場です。Spotify、Netflix、マンガアプリ(LINEマンガなど) 、Steamなどですね。

画像4

彼らは、IPコンテンツを自ら生み出すのではなく、様々なコンテンツホルダーのコンテンツを提供するサービサーの立ち位置です(NetflixなどIPコンテンツ創出まで入っていく流れもあります)。業界構造でいうと、媒体と流通の領域をディスラプトしています

彼らは無料化の流れを規制で対処しようとする既存のコンテンツ業界を横目に、「コンテンツをより便利に楽しめるようにする」といった、UXを価値に新たなマネタイズを実現してきました。(詳細は次章)

(3)プラットフォーマーがもたらした2つの変化

彼らがもたらした1つ目の変化は、「コンテンツビジネスのサービス化」です。Caas(Contents as a Service)的な。

彼らはビジネスモデルを「コンテンツの販売(モノ売り)」から「コンテンツを便利に楽しめる体験(サービス提供)」に変化させました。競争軸はUX(ユーザー体験)に変わり、マネタイズモデルもサブスクリプションが生まれています。


2つ目は、「顧客接点獲得によるデータドリブンの実現」

出版社や音楽レーベルといった従来のコンテンツ企業と違い、プラットフォーマーは直接顧客接点を持っています。これにより、競争軸であるUXをデータドリブンで磨けます。そしてデータを持つことで様々なイノベーションを起こしています。

例えば、個人の嗜好データから個別化されたコンテンツのレコメンドをすることは、マス的消費(みんな同じコンテンツを見る)が当たり前だった業界に、個別化消費(自分にあったコンテンツを選んで見る)という「消費方法のイノベーション」を起こしてます。
また、人気のあるコンテンツ傾向がわかるので、「制作費はかかるけど世の中に出してみるまでヒットするかわからない」という投資先行型でリスクが高いコンテンツ業界において、リスクを減らしてコンテンツ企画ができるという「企画のイノベーション」も起こしています(Netflixのオリジナルコンテンツなどまさに)。
他にも、これまでの流通では扱えなかったロングテールコンテンツを扱う「流通イノベーション」など、従来のビジネスを大きく変えました。

要するに、彼らは従来のコンテンツ業界を単純にデジタル化させたのではなく、デジタルを活用して大きなイノベーションを起こしているのがポイントだと思います。

(4)IPコンテンツ企業の抱える課題

上記のような業界の変化から、IPコンテンツ企業では、従来のビジネスモデルからの収益は減少・停滞しています。

ーーーーーーーーー
①音楽市場
音楽ソフト(CD、レコードなど)は大きく縮小。市場全体はコンサートや音楽配信市場の成長で維持。

画像7

※出典:レジーさんのnote記事「国内音楽市場はネット配信で復活?ほんとに?」より https://note.com/regista13/n/n0dc406e5a7d5

②マンガ市場
紙の単行本や雑誌(ジャンプなど)は縮小し、マンガアプリや電子書籍などが成長

画像8

※出典:『出版月報』2020年2月号より https://hon.jp/news/1.0/0/28155

③映像市場
DVDの販売やレンタルは縮小し、有料動画が伸びてます

画像9

※出典:映像ソフト市場規模及びユーザー動向調査2018 (一般社団法人 日本映像ソフト協会デジタル・エンターテイメント・グループ・ジャパン株式会社 文化科学研究所)より
http://jva-net.or.jp/report/annual_2019_5-15.pdf

④ゲーム市場
家庭用ソフトやハードは停滞気味。オンラインプラットフォームが成長。

画像10

出典:ファミ通ゲーム白書2020
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000007188.000007006.html

ーーーーーーーーーーーーーーー

このように、コンテンツ市場全体では市場規模を維持しているものの、プラットフォーマーの業界ディスラプトによって収益を上げている企業が「コンテンツ企業」から「プラットフォーマー」へと移行しています

例えばSpotifyを事例にとります。

IPホルダー(音楽レーベルなどのコンテンツ企業)に入る収益はどう計算するのか。Spotifyの有料ユーザーのサブスク総額が原資となり、まずSpotifyが30%をとる。残りの70%を、再生数の割合でIPホルダーで分配します。
現状、再生単価でみると0.3〜0.5円と言われています。この金額、例えば1再生0.4円とすると、例えばCD1枚1000円の売上まで出すのに、2500回聞いてもらう必要があります。(絶対聞かないですよね)

つまり、ファン1人から音楽コンテンツ単体でもらえる金額は大幅に下がっています。CD制作コストなどがかからないことを考慮しても、かなり収益が下がっていくることは容易に想像できます。

さらに、現在話題になっているAppleの30%手数料(通称Apple税)が全体の収益をさらに下げます。ちなみにAppleやGoogleを図に入れると以下に位置します。「スマホアプリ」という、Spotifyよりもさらに深いレイヤーでユーザー接点を握っています。

画像5

これは、アプリを提供する企業がアプリ経由で課金した金額の30%をとるという、かなり強気な設定です。
この結果、Spotifyを例にとると、有料会員のサブスク原資のうち30%をまずAppleがとって、その残りからSpotifyが30%とって・・・・というように、場合によってはIPコンテンツ企業までに、Appleとアプリ提供プラットフォーマーの二重の税がかかっているのです。(これは辛い)

ただApple税に対しては、対処する動きが増えてきています。
「なんでKindleはアマゾンアプリから買えないんだ!」って思ってる人も多いと思いますが、その背景はまさにこの部分です(電子書籍売上のApple税を避けるためにアプリでは買えない)。

他にも、SpotifyやNetflix、日本だとジャンプ+なども対Apple対策をしています。この記事が詳しくまとまっていたので、興味あれば見てみてください。

改めて、現在のコンテンツ業界の課題を整理すると、

・コンテンツ無料化時代の中、「媒体」「流通」領域をディスラプトして顧客接点を獲得したプラットフォーマーが台頭
・彼らはコンテンツビジネスを「モノ売り」から「サービス」に変革。コンテンツ企業は従来のモデルより収益が大きく低下
・さらに有料プラットフォーマーより深い階層にいるApple税でも、コンテンツ企業の収益はさらに低下
・しかし、従来ビジネスが縮小し、顧客接点も握られているため、プラットフォーマーに頼るしかない

という構造になっていると思います。まさにコンテンツ業界には新たな産業モデルの構築が急務なのだなと。このような中、「コンテンツ企業 VS プラットフォーマー」の戦いが起きています。


(5)Gaudiyがやろうとしてること

Gaudiyでは、プラットフォーム主体の現在の産業モデルから、IPコンテンツ主体の産業モデルの構築を目指しています。
コンテンツを創出してくれる人たちがより報われ、適正な収益還元がなされ、それにより新たなコンテンツ体験が提供されて、ファンがもっと楽しめる世界観です。

具体的にはまだまだ言えないことが多いのですが、現在、様々な大手コンテンツ企業(音楽レーベル、出版社、ゲーム会社など)と連携しながら、ブロックチェーンを中心としたデジタル技術を活用して、これまでにないユーザー体験とビジネスモデルの創出を進めています。

以下の図でいうと、①のIPコンテンツ単位でユーザー接点をしっかりと取りに行くD2C的な取り組みをベースに、②のコンテンツ無料化時代に共存する収益モデルの発明や、③のIPの活用領域の拡張などを進めてます。

画像6

一緒に未来を作っていく仲間も絶賛募集中ですので、もし興味がある方がいらっしゃれば一度カジュアルにお話しさせてください!お気軽にTwitterのDMお待ちしています。エンジニア、PjM、PdM、広報、採用、デザイナーなど全方位探してます!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?