本『歌集 ふるさとは赤』/ 三原由起子

本『歌集 ふるさとは赤』/ 三原由起子、読了。

『ふるさとは赤』は福島県浪江町出身の三原由起子氏の歌集である。
震災前からの短歌と震災後の短歌が入っている。震災前の歌集は、淡い気持ちや恋心、あるいは作者自身の結婚をテーマにするなど、日常のことを歌ったものが多い。
しかし震災後は一変する。表題作の歌
「iPad片手に震度を探る人の肩越しに見るふるさとは 赤」
に見られるように、今まで体験しなかった[非日常体験]がいきなり日常になってくる。地震、津波、原発事故、避難、などなど。
これらの出来事の戸惑い、やるせなさ、怒りを歌にこめている。
また、復興という言葉によって美化することに抗う歌もある。

多くのものを失った、歌人の記録である。
震災と原発事故からもう10年以上たったが、改めてあの日々は何だったのかと考えさせられる一冊である。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?