本『音楽(ビート)ライター下村誠アンソロジー 永遠の無垢』

本『音楽(ビート)ライター下村誠アンソロジー 永遠の無垢』/大泉洋子、読了。

2006年に51歳で亡くなった、音楽ライターの下村氏のアンソロジー。
下村氏のライターの活動はライターにとどまらず、同時にミュージシャンでもあり、イヴェントプロデューサーでもあった。自らインディーズレーベルを設立し、音楽をつくり、若いミュージシャンも発掘して、育てていた。
この本はその下村氏の多彩な活動を克明にすくい上げている。

この本を通して、1970年代から1990年代の邦楽の音楽シーンを感じることができる。同時代を生きてきたものとしても、確かに音楽が熱い時代だったと思う。そんな時代を下村氏は丁寧に描いている。それはライターとしての記事だけではなく、ミュージシャンとしての下村氏の詩にも感じとれる。
また、下村氏は多くの方から好感を持たれていたことも本書から感じ取れる。ライターの同業者だけでなく、ミュージシャン同士、イヴェントの協力者からも大いに好かれていた。それが、「下村さんは幸せな男だなぁ」と今でも言われる所以であろう。

1970年代から1990年代の音楽の記録、記憶としても読める本書である。単に「バブルの時代」と呼ばれることが多いこの時代だが、こんなにも熱心に音楽に取り組んで時代であったことを証明する本でもある。できることなら本書は、若い人にも読んでもらいたい。こんな時代があったことを知ってもらいたい、と思わせる本だ。


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