映画『生きる LIVING』

『生きる LIVING』
(2022年 イギリス)
監督 : オリヴァー・ハーマナス
脚本 : カズオ・イシグロ
主演 : ビル・ナイ

黒澤明監督が1952年に作成した映画『生きる』のリメイク作品。黒澤作品は1950年代の日本が舞台だが、本作品は同じ年代でイギリスに舞台を移し、カズオ・イシグロの脚本で作成された。

おおまかなストーリーは黒澤作品と同じ、設定も同じである。大きな違いといえば葬式のくだりである。黒澤作品は官僚社会へのメッセージが強く描かれているが、本作品はその度合いは少し控えめである。その分、黒澤作品より上映時間が40分ほど短い。

この作品はリメイクに成功している。普遍的なテーマである「いかに生きるか」というものを見事に表している。カズオ・イシグロの脚本が良い。カズオ・イシグロの脚本は黒澤作品から良い部分を引き継ぎ、変える部分はイギリスの観客にアピールすべく変えている。その匙加減が絶妙であると言える。

黒澤作品は主人公の志村喬の演技が際立っているが、本作品の主人公ビル・ナイもかなり良く、老いた人間が突然宣告を受けて戸惑う姿を見事に表現している。

地味なテーマだし、若い人には受けないかもしれないが、古い映画ファンには是非お勧めしたい作品である。


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