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剣城かえで
2023年12月19日 17:46
潮の満ちた暗い海を、麗人はひたひたと歩いていた。砂浜から続いていた長い桟橋を、もうどれくらいの時間が過ぎたのか分からないほどに歩き続けていた。高潮で桟橋は波を被って沈んでいた。麗人はその道を、足を濡らしながら何処までも歩いていた。潮風と、波の音を杳然と聴きながら、塩分を含んだ風に長い髪を軋らせて。振り返ってみると、リボンで結わいた黒緑の長い髪が麗人の横顔を素っ気なく撫でた。岸は、もう、見えなかっ