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掌編小説【薔薇喪失】

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美貌の公爵こと麗人薔薇柩による美と幻想への耽溺。 最も美しいものを失い、自らの美貌に処刑された貴公子の、優美な日常と殺伐の物語。 掌編小説。耽美小説。幻想文学。幻想小説。
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2023年11月の記事一覧

掌編小説【薔薇喪失】03.『渇き』

掌編小説【薔薇喪失】03.『渇き』

 薄ぼんやりと煤を上げて、めらめらと燃える蝋燭が宙に浮きながら血を滴らせていた。赤い蝋燭の血が、祭壇に近づくものを焼き払いながら、そこに横たわる薔薇の香りを守り鎖していた。力ない軀を祭壇に横たえているのは、麗人だった。凛々しい柳眉を物憂げに、鋭い険のある眦の明眸を明滅させ、長い睫毛が傲慢に瞳に影を塗る、美貌。至高と崇高を兼ね備える高貴は、誰の目に映ろうと美を顕然かつ客観的事実として焼き付ける。緩く

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