物語は、内から来るのか、外からなのか。
いしいしんじさんの「いしいしんじのごはん日記」に、物語が始まる瞬間が書いてあった。
いしいしんじさんのごはん日記は、エッセイ、というか本当に日記で、毎日何をして何を食べたか、が淡々と書いてある本だ。
神奈川県の三崎に引っ越してからのごはんが美味しそうで、私が結構好きな本だ。
この本の中で、沖縄へ旅行へ行く日がある。
黒島の仲本海岸で泳ぐシーンに該当箇所がある。
安全で安寧な世界から、いきなり足元の見えない真っ青な闇へ。
闇の中には、たくさんの美しいものと、静かな驚異が見える。
しかし幸いなことに浮力があったため、真っ青な闇に落ちずに済んだ。
私は、いしいしんじさんの本は、「ぶらんこ乗り」「麦ふみクーツェ」「トリツカレ男」「プラネタリウムのふたご」を読んだことがある。
詳細をはっきりもは覚えてないが、安心なやさしいかわいい世界の中に、突然闇がある、ような、そんな物語だった印象がある。
書かれている小説を象徴するようなシーンだった。
私は、物語(とくに空想の世界のような童話のようなお話)はなんとなく自分の内側から湧き出てくるものだと思っていた。
だが、いしいしんじさんのこの場合は、外からいきなり物語が訪れた。事故のように。
物語は、内から来るのか、外からなのか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?