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2語のコミュニケーション

「これぇ」

「ありがとう」

この2語から全てを推測しないといけない。

介護職として施設で働き始めてもうすぐ2ヶ月。

常勤として勤務しているので、入居者の特徴や個性も段々とつかめてきた。


片麻痺がある女性。

初めて出会った時も

「おはようございます」

と挨拶をしたら、帰ってきた返事が

「ありがとう」

この時は彼女が2語しか発することができないとはつゆ知らず。


共に過ごす時間が増えるにつれ彼女の伝えたい

「これぇ」

を理解できるようになってきた。


朝の「これぇ」は「トイレに行きたい」

トイレの後の「これぇ」は「お茶が飲みたい」

入浴の日の「これぇ」は「お風呂に行きたい」

お茶の後の「これぇ」は「お昼ごはん行きたい」

お昼ごはんの後の「これぇ」は「トイレに行きたい」

トイレの後の「これぇ」は「午後のココアが飲みたい」

ココアの後の「これぇ」は「部屋のカーテン閉めて」

カーテン閉めた後の「これぇ」は「トイレに行きたい」

トイレの後の「これぇ」は「夜ごはんに行きたい」


夜の時間帯は退勤してしまうのでどんな「これぇ」があるのかは知らないが、きっといろんな「これぇ」があるんだと思う。

だいたい決まったルーティンで過ごしている彼女が、私たち職員に、指差しと表情でいろんな「これぇ」を訴えてくる。

彼女の伝えていることが当たっていると、うんうんと大きく頷き「ありがとう」と言ってくれる。

私たち職員が理解してあげれないと「こぉれぇ!!」と首を横に振り、大きな声を出す。

彼女に質問をする時は「YES」「NO」で答えられる聞き方の方が良いんだろうけど、ついつい会話したくなる。


彼女に質問をしても答えは返ってこない。

代わりに返ってくるのが「ありがとう」

「痛いところない?」「ありがとう」

「ごはん全部食べれた?」「ありがとう」

「ちょっと待っててね」「ありがとう」

「寒くない?」「ありがとう」

同じ「ありがとう」でも表情が違ったり、ジェスチャーが違ったりするので、それを見るのがおもしろい。

なので彼女とはたくさんコミュニケーションをとるようにしている。

握手をしたり、ハグをしたり。


このご時世、距離を保たないといけないんだろうけど、施設では触れ合いが大切な時もある。

触れ合うことで認知症特有の不穏が落ち着いたりすることもある。

認知症があっても、障害があっても、ひとりの人間。

自分がされて嫌なことは相手にもしない。

ましてや人生の先輩だということを忘れてはいけないし、教わることもたくさんある。


介護の仕事を汚いとか、つらい、大変なイメージでとらえている人が多いのも事実だけど、こんなにやりがいを感じ、こんなに毎日「ありがとう」を言われる仕事はなかなかないと思う。


40歳を境に、介護業界へ転職したのは大正解だと感じている。




介護って楽しい。

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