1・近況 祖母との別れ

2020、10月末からとても精神的にボロボロになる出来事で深い鬱と心身症で動けなくなった。

育ての親である祖母が倒れたのだ

祖母は共働きの両親に代わり、私達姉妹の世話をしてくれた。

美味しいご飯を食べさせてくれて、時には厳しくしてくれた。

お金がない!が口癖の両親にかわり、なけなしの年金から、お小遣いを出してくれた。

祖母も宿題をしない、朝起きない、私達姉妹を厳しく叱ったが

母のように理不尽な事は言わなかった。 

幼い頃からずっと一緒にいた。

でも私は実家に留まることでうつ状態で動けなくなり

祖母とはあまり話さなくなった。

倒れる前日、私は偶然、帰省していた。

中学時代の友人と会う約束をしていたからだ。

祖母は足が悪かったが、ゆっくりと歩いて洗濯をしていた。

普通に話をして、貰い物の上着を見せてくれた。

久しぶりに会った祖母はなんだか急に老け込んでいて

ちょっと不安になったが、つぎ実家に来ることがあれば肌着なんかを持って来ようと思った。

数年前、祖母は肺塞栓症で倒れたことがある。

今回も血栓がどこかに飛んで、塞栓症になったのだと思った。

救急病院へ駆けつけると、祖母の意識はほとんどなく

呼びかけにも答えられない状態だった。

祖母の様子を見て、“これは、とても重いものだ”と悟った。

不安感と緊張で喉がつまり、胸が重くなった。

何分か待つと、担当の医師から説明があると呼ばれた。

その場に来ていた、祖父、母、三女、私で説明を聞いた。

『お祖母さんは、脳内出血で意識がほとんどない状態です。

左脳から60~70ml出血しています。』

医師はCTの画像を見せて説明してくれた。 

『意識が戻るか、分かりません。

いつ、急変するか分かりません。

前頭葉、側頭葉に出血があり、脳内を圧迫しています。

ここは言葉を話すための器官です。

意識が戻ったとしても、全失語状態でお話はできません。』

私の趣味は医療ドラマを見ることで 

分からない単語を調べたりすること

祖母は長くないと、確信してしまった。

ただただ溢れる涙、でも脳内は不思議とクリアで

ドラマみたいだ、こんなこと現実にあるんだ、と泣きながら考えていた。

『お祖母さんは血栓が出来ないようにするお薬を使っていますが、脳内の出血を止めるために、お薬を中止します。

中止すると血栓が出来やすくなり、血栓がどこかに詰まってしまうと、そのまま亡くなる可能性が高いです。

それでも出血を止めるためには必要です。

脳内は出血で浮腫んでいます。 

いまは浮腫をとるお薬を使用しています。

浮腫が取れると、意識が戻る可能性もありますが…繰り返しますが、意識が戻るかはわかりません。

脳内出血のこれからの治療ですが

ふたつ選択肢があります。

1つ目は出血箇所を取り除く手術

お祖母さんは脳内の3分の2が出血しているので、脳の3分の2を取ってしまうことになります。

脳は再生しないので、言語機能はもとに戻りません。

手術をすると髪の毛を剃って、頭蓋骨を開けることになります。

大きな傷が残りますし、坊主になります…

ご高齢ですし、手術中に亡くなる可能性が高いです。

2つ目はこのままお薬で様子を見ること

入院して、投薬を続けます。

…急変した際、延命を希望するか、御家族で話し合ってください。』

長い長い説明なのに

今でも思い出せるのは、何故だろう。

処置室を出て、廊下で叔父と父が来るのを待った。

遠方で仕事をしている叔父は、連絡を受けてすぐに新幹線に乗り、来たらしい。

祖母は叔父の母なのだ

とても辛そうだった。

父は仕事を抜けられず、来られないと母から伝えられた。

父に聞いた説明を一刻も早く伝えたくて

何度も電話を掛けたが、圏外へ行くような仕事なので繋がらなかった。

祖母は検査のために寝かされたベッドごと検査室へ移動した。

母、私、三女で付き添った。

検査が終わるのを待つ間、母は『お祖母ちゃんの介護がしたい。絶対意識が戻って家に帰って来る。』と非現実的な事を言っていた。

現実逃避だと思い、少し腹がたった。

祖母が目覚める可能性はほぼ無いと言外の意を感じていたから。

検査が終わると入院病棟へエレベーターで上がった。

デイルームがあるので、そちらでお待ちくださいと言われ、母は入院の手続きの書類をたくさん書いた。

看護師さんに、今から妹がくるけれど

病棟へ来てもいいか聞いてみた。

『感染症予防で、これ以上の人数は入れないです』

と申し訳なさそうに言われた。

次女へ、面会できないことをLINEで伝え

次女からの連絡を待っている間

やっぱり、頭の中は変にクリアで

涙はでるが、落ち込んでも事態はどうにもならないんだと

落ち着いた気持ちで居た。

次女からLINEがきた。

『会えないってこと?どうしても?』

会わせたい 

私と同じ、祖母に育てられたのだ

会えないと辛いだろう

もう一度看護師さんに聞いてみたが

答えはNOだった。

例の感染症が流行している真っ只中だった為だ

私の住んでいる所は、感染者は数名程度

人と接触しないような数日の旅行などは行けるような状況だった。

それでも、病院だ。

しかもいつ急変するか分からない、高齢者の病棟だ。

面会規制がかかるのも当然だった。

容態が悪くなったときは、面会規制が緩和されます、と説明を受けた。

それから数日、面会規制で祖母の顔は見れなかった。

面会規制が緩和された。

祖母の容態があまり良くない。

今度こそ次女と面会へ向かった。

病室へ行き、祖母の顔を見ると

妹は泣き崩れ

『ごめん、すぐに来れなくて、ごめん

痛かったよね、痛かったよね

全然実家へ帰らなくて、顔を見せることもなかった

コロナで結婚式も延期になって、本当ならばあちゃんにドレス姿見せられたのに

本当にごめんね、大好きだよ』

祖母は、意識がない、返事は出来ない。

それでも、2人で祖母の思い出を話しながらわんわん泣いた。

面会は15分程度にしてくださいと言われたが、離れがたく30分は病室から出られなかった。

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