濃厚鶏白湯は、本当に濃厚だ
麺屋 一楽 (飯田橋)
地下鉄・南北線の乗り換えには飯田橋駅を使うことが多い。
そのついでにランチを、ということで向かったのが「麺屋 一楽」だ。
元々この辺りは高校・大学を通して縁があり、土地勘もあるのだが、この店を見つけたのは7、8年前だろうか。
仕事で本駒込を訪れた帰りに目に留まったのが、この看板。
店名よりも大きい「鶏白湯」の文字。
実はこの記事を書くまで店名を知りませんでした。(^^;)
間口は一間半(約2.7m)、昔の長屋が店舗となって軒を連ねています。
年齢を重ねたせいか、あっさり系ラーメンが好きになり、鶏白湯の文字にひかれて暖簾をくぐった。
鶏白湯は「こってり」と「あっさり」があって、最初はあっさりを食べた(これも美味しい)けれど、店イチ押しの濃厚鶏白湯を試したところ病みつきに。
この日も迷うことなく、入り口横の券売機で味玉入り濃厚鶏白湯ラーメンを選んだ。
店内は奥に細長いカウンターに、丸椅子が6~7脚置かれているだけ。
冬場は着ぶくれしているので、お客さん同士のジャケットが擦れながら奥の席に座る。
待つ時間に「 #探偵さえいなければ /東川篤哉」を読み始めた。
本作では五つの短編の内、三作が倒叙式の物語となっている。
一話目の「倉持和哉の二つのアリバイ」では、犯人である倉持がアリバイ作りのために利用しようとしたのは烏賊川(いかがわ)市でも有名な探偵・鵜飼。
このシリーズの主役である鵜飼は、切れ者の探偵――ではなく、とぼけたキャラというか、とても名探偵とは思えない頼りなさを持つ中年男だが、本人が意図しない形で結果としては犯人を追い詰めていく。
今回も丁寧に張られた伏線と憎めない鵜飼のキャラが見事に描かれていて、誰もが思わずニヤリとしながら納得するのは間違いない。
こちらが濃厚鶏白湯ラーメン。
糸切り唐辛子が彩を添える。水菜のシャキシャキ感も良い。
あまり待つ時間もなく、ラーメンが出された。
まずは一口、とろりとしたスープをすする。
鶏の旨みが凝縮されたような味わいが口に広がり、まとわりつく。
そう、まさに「まとわりつく」といった印象を受けるほど濃厚なのだ。
太めの麺とよく絡み、美味い。
麺とスープを交互に口へ運ぶ。
玉ねぎのみじん切りやメンマといった脇役たちも、文字通りいい味を出している。
特にここのメンマは独特というか、穂先を使った柔らかく優しい味(塩味がきつくない)でとても好き。
そして、味変用に黒七味と自家製フルーツ酢が用意されている。
気の利いた焼鳥屋に置いてあることが多い黒七味は、一味唐辛子のように辛くなく、花山椒ほどしびれることもない、深みのある香りと味わいがある。
これを一振りかけるだけで、濃厚スープがまた一段と美味しくなる。
フルーツ酢も酢特有のきつさを抑えてあるが、個人的にはスープの味と合わない気も。
ラーメンのスープは残すことが多いけれど、この店のスープは飲み干さずにはいられない。
口の中にまとわりついている旨みを感じながら、店を後にした。
――美味しいものと文庫本⑪――
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