『今日のアニミズム』

・奥野克巳、清水高志『今日のアニミズム』以文社、2021年

http://www.ibunsha.co.jp/new-titles/978-4753103669/

お互いが論考をよせ、それについて対談するという形式で、2回分が収められている。
奥野は、マルチ・スピーシーズ人類学の日本における中心的な研究者。清水は、ミシェル・セールの研究者(読むまで、よくは知らなかった)。
読みはじめて、清水のアニミズムをキーワードに、哲学、仏教(禅)、人類学を統合しようとする独創的な思索に圧倒された。二項対立の脱構築というのに言葉だけは親しんだが、複数の二項対立を組み合わせていく論理。様々な人類の思考が実はこのようなあり方を志向していたと論じていく。ふわふわとしか理解できてはいないが、とても腑に落ちることが多かった。
印象的だったのが、252ページのラカンの鏡像段階論が生物学や動物生態学で自分と同じ種を認識することで成熟に至るとする議論を前提にしたものであるから、これを人と動物の関係に応用することもできるかもしれないと、ウィラースレフ『ソウル・ハンターズ』の指摘を踏まえて言及する部分。https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=845
アニミズムを思考としてとらえることがまず私としてはおもしろく感じた。たとえば、まだ言葉をしゃべることができない赤ちゃん(非人格的存在=非人間)に親(人間)が対するときの思考というのも、言葉を持たない存在に意志や感情を積極的に読み取ろうとするコミュニケーションをするのであるから、アニミズムといえるのではないかなど考えが触発される。
関一敏経由で人類学の呪術研究などを少しかじったが、マルチ・スピーシーズ人類学のアニミズム論とどう交差するのだろうか。

信仰や超自然的なものとして追いやらずに、哲学や論理として考えるときわめて身近なものになる。興味がつきない。

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