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心の中の宝箱を見るような本

ただずまいが可憐で、読み始める前にまずは愛でてしまう本だなぁ。
益田ミリさんの新刊「今日の人生3 いつもの場所で」を書店で手に取ったとき、そんなふうに思いました。


装丁は大島依提亜さん。
細部までセンスの光るデザイン。大好きです。

ミリさん(友だちのように、心の中でこう呼んでしまう)の日常でおきた出来事を、漫画で綴っていくエッセイ集
の3巻目です。
ときにはたった3コマで表現される日もあれば、自身の心情の変化をコマを重ねてじっくりと表現される日もあり、緩急のつけ方も絶妙で、気がつけばあっという間に読み終えてしまいました。

なにかを考えようと
思えば考えられる
ひとときだけれども

『考えるの
 もったいないな』

ぼんやりするのが
もったいないのではなく

ぼんやりしないことの
ほうがもったいない

そんな午後がこの世界には
存在するのでした

「今日の人生3  いつもの場所で」益田ミリ

引用したいところはたくさんあるのですが、上にあげたものは特に好きな箇所です。

どんなに小さなことでも、心地良いと感じたこと、嬉しいと感じたことを、心の中の宝箱にそっと仕舞っておくことができる方なんだなぁ、と思います。
ただすれ違っただけの人の会話から「良いな」と思える言葉をすくいとり、一瞬の動物の表情にも目をそそぐまなざしの細やかさもミリさんならではのもの。

読み通して気付いたのは、ささやかな日常も言葉や絵にすることで、彩り豊かな記憶として自分の中に残すことができる、ということ。

毎日が同じことの繰り返しのように感じられることもあるけれど、本当はそうじゃないんですよね。
日々季節は巡っていくし、自分自身の身体だって刻々と変化していく。
生活や仕事に追われて心の余裕が無くなると、小さな変化に気づかなくなってしまうだけ。
だから、心の余白を常に保って、ささやかなこともキャッチしてそれを表現できる自分でいたいと、改めて思ったのです。

自身の感情をおろそかにしないことが、大切。

どんなときも、自分が「楽しい」「嬉しい」と感じられることをちゃんと選んでいくと、軽やかに生きられるようになるよ。

そんなふうに語りかけられているように感じる一冊なのでした。

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