見出し画像

エンプティ・チェアに腰掛けて

これは

ある

女性クライアントの

<対話>の

ものがたり

事前に

彼女は

言っていた

「過去の自分と訣別したい…」と

そして

場の設定が行われ

秘密の空間に

椅子が

二つ

置かれる

一つは

彼女が座り

もう一つには

<若かった頃の>あなたが

座っている

そして

エンプティ・チェアに

腰掛けながら

二人は

対話を

始める

あんなことも

あったね

こんなことも

あったねと

二人に

共通する

出来事を

語り合っていく

そのうち

不意に

長く

長く

封印していた

<インナー・チャイルド>が、

大人になるために

深く

青い

記憶の

海の

底に

押しやるしかなかった

<インナー・チャイルド>が

姿を現し

そして

牙を

向いた

沸き上がる

炎のような

怨念

そして

透明な

あなたに

食って掛かる

「なんで

あの頃

私を

受け入れてくれなかったの?!

あなたの

心を

捉えられなかった私も

いけなかったけれど

あなたにも

少しは

責任が

あったはず

ねえ

どうして

受け入れてくれなかったの?!

あなたが

去ってから

一体

私が

どんな思いを

してきたと

思ってるの?!」

少女の

叫びに

対して

透明な

あなたが

どんな言葉を

返したのか

そもそも

応答しなかったのか

それを

少女は覚えていない

ただ

叫び切った

少女は

涙を流しながら

小さく呟く

「好きでした…」

そして

深い

眠りへと

落ちて行く

深い

深い

意識の

海の

底へ…

その顔に

うっすらと

微笑(えみ)を浮かべながら…

そして

訪れる静寂

さまよっていた

若く未熟だった

たましいは

故郷(ふるさと)へと

還っていった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?