ライブハウスの街でchill out | スターバックスシモキタエキウエ店
メジャーデビューを夢見る僕の話。
16時30分 下北沢
小田急線から下車して、長いエスカレーターに驚く。この駅、こんなだったっけ。
STARBUCKS COFFEE シモキタエキウエ店
駅ナカや駅地下、なんて言葉があるけどここは駅の上、だからエキウエ。雑貨屋やタイ料理、担々麺。シモキタによくいる人間が好きそうなラインナップに内心、クスッと笑う。
三角形のフロアは広々としている。キッチンでせっせとドリンクを作る店員さんの姿が、ライブハウスのドリンクスタッフと重なった。
「THE GROOVE」 / OVER ALLs(山本勇気)
憩いの場をぐるっと囲うのは、モノクロで大胆なウォールアート。シアトル・パイクプレイスのアメリカンな街並みと、ここ下北沢の風景が織り交ぜられている。見知らぬ誰かが構えるそれは僕のギターに似ていた。大学生のとき、バイト代を貯めて初めて買ったFenderのアコースティックギター。下北沢の楽器屋で選んだのを今でも覚えている。店主のおっさんの目元のシワが懐かしい。正直、楽器を始めたばかりで音の良さとかはよくわからなかったから、とりあえず持ったときのフィット感とデザインで即決。こいつを持ってライブハウスで歌ってる自分をイメージした。
高校生のときは軽音部でバンドを組んでいた。思えばあれが僕の音楽の始まり。青春に人生かけてると信じてたのはどうやら僕だけだったみたいで、メンバーとは卒業とともにあっけなく疎遠になった。ベース、ドラム、キーボード、あいつら元気かな。進路もバラバラだったから、たまに連絡を取るくらいであまり会ってない。
学校の音楽室でいつもエレキギターを借りて、「いつかは自分のを」なんて思ってたけど、気づけば僕はアコギ一本で弾き語りをしていた。作詞作曲が楽しかった。武道館にギター1本で立つあのスターになりたくて、夢中になった。
体育館のしょぼいステージで一生懸命アンプやら何やら繋いでいたあの日。しょぼくてもあれが当時の僕らの最高のステージだった。無垢な10代。まだ、ライブハウスの薄暗いバーカウンターや煙草の匂いなんて知らなかった。
スターバックスラテの牛乳をアーモンドミルクに変えてみた。オシャレじゃん僕、って自画自賛。こんなカスタムメニュー、前はなかった気がする。
束の間のチルアウト。
曲作りは家でやるタイプだから、こういうとこではただのんびり過ごすのに限る。空が暮れてきた。開場は18時だっけ。場所は駅から歩いて10分くらいの、あのハコ。僕も数回立ったことがある。今日は、仲のいい音楽仲間がライブをする。
LINEの通知が来た。「もうシモキタいる?」「俺の新機、めっちゃイイ。楽しみにしてて」たしか数日前にギターを新調したと言っていた。今日が初お披露目らしい、本番前のワクワク感が伝わってくる。「もういる。チルってる」「また後でな!」
同時に、Twitterの通知も。新曲の告知ツイートにいいねが付いてる。誰だろう。聴いてくれたのかな。MVも見てくれたかな。
ダラダラと伸びをして、また壁を見てみる。いいな。いつかこういう雰囲気のアー写かジャケ写やろうかな。
アーモンドの香ばしい甘みに目を閉じると、頭の中でコードが鳴り始めた。
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STARBUCKS COFFEE シモキタエキウエ店
〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-24-2 小田急下北沢駅シモキタエキウエ内
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OVER ALLs
http://www.overalls.jp/
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