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「おかえり」から繋がる人とアート。東京都現代美術館

東京都・清澄白河
ここが「アートの町」と称されるのは、東京都現代美術館(MOT)の存在感に他ならない。
そんな町のシンボルは、3年弱の間も休眠に入っていた。2019年3月にリニューアルオープンしている。

下町風情を感じさせつつ、瀟洒なエッセンスの効いた街並み。ファミリーも多く、住みよい街の雰囲気を感じさせる。高い建物があまりないせいか空が広く、2車線道路の道沿いも広々と感じられた。

都立美術館の中でもコンテンポラリー・アートを領域としている個性があり、現代美術に親しめる「普段使いの美術館」をコンセプトにし、「開かれた美術館」を目指している。国内外の主要なアーティストの個展や、約5,500点の所蔵作品をいかしたコレクション展「MOTコレクション」も通年で楽しめる。

エントランス前には広いバス停があり、バスでのアクセスも便利。豊かな水はさながら都会のオアシスといったところ。隣には「木場公園」があり、木々の彩りや自然が身近な環境だ。
館内の壁はガラス張りで、開放感と採光は抜群。「現代美術」にふさわしい、モダンな建築も見どころだ。直線的な空間にぽつぽつと置かれたコルクの丸いベンチがかわいらしい。


リニューアル・オープン記念展
『MOTコレクション ただいま/はじめまして』

展示室

入場すると、白を基調とした開放感と余白のある空間が広がっている。自然光の入るフロアもあり、自由に進みながらさまざまな現代アートを鑑賞できる。
館内は撮影可能で、気に入った作品は写真に収めることもできた。彫刻、デザイン、ファッション、映像、インスタレーションなど多彩な現代美術の魅力を十分に引き出せる空間だ。

今回展の企画タイトルに込められた秀逸なセンスは高く評価したい。
リニューアル期間を経て、「ただいま」と帰ってきた作品。
「はじめまして」と新たに展示される作品。
それから、長い休館期間を経て、「ただいま」と再訪の機会を喜ぶ人。「はじめまして」とこれを機に訪れる人。
この二言が、アートと人とを結ぶ関係性を示し、繋がりの温かさを表現しているように感じる。

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よく見てみると、側面まで鮮やかに着色されている絵画。絵は平面、という感覚を揺さぶるようなおもしろい仕掛けだ。こういう見せ方だと絵画も形のある物体、立体であると再認識することができ、新鮮味を感じる。

作品と対面した人の頭の中にひとひねりある揺さぶりや気づきを与える、鑑賞”体験”の要素が大きいのも現代アートの特徴と言えるだろう。

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エレベータの表示も同じ。1階の上は2階だと当たり前のように思っていたら完全に騙される。ちなみに、フロアマップを見ると2階もたしかに存在しているのだ。こういう建物の構造の面白さや遊び心もコンセプティブで好感が持てる。
MOTらしさを存分にいかした、素敵な展示だった。


ミュージアムショップ

東京都現代美術館のミュージアムショップ「NADiff contemporary」では現代アートの関連書籍や、多様なクリエイターによる個性的なアイテムを販売している。「人とは違うものを身につけたい!」「ちょっとユニークなミュージアムグッズがほしい!」という方にはおすすめ。行くたびに商品をチェックしてみよう。

ミュージアムカフェ

食事を楽しめる場所は2つある。

カフェ&ラウンジ「二階のサンドイッチ」はその名の通り2階フロアにあるカフェで、コーヒーやソフトクリームなどの軽食を楽しめる。店名にもなっているサンドイッチは日替わりで種類も豊富、王道の組み合わせからスイーツ系、変わり種などいろいろ。テラスからはパラソル付きのテーブルやベンチで食べるのもいい。中庭にも通じているため、お散歩したり休憩したりして楽しめる。

レストラン「100本のスプーン」は豊洲やあざみ野にも拠点のあるお店。大人サイズのワンプレートをそのままの見た目・味でハーフサイズにしたメニューはパパやママと同じものを食べたいお子様にぴったり。通路が広く、ベビーカーをお持ちの家族連れが安心して利用できるところも“開かれた美術館”へのこだわりなのだろう。企画展ごとに販売しているオリジナルのパフェを目当てに訪れる方も多いそうだ。

年間パスポート

もし、いつでも気軽に来て楽しみたい!という方がいたら「MOTパスポート」を利用してみよう。枚数が限られているため、その年のパスポート販売が始まったら早めに購入するのがおすすめだ。

他には、国内最大規模といわれる「美術図書室」も必見。美術関連図書や展覧会カタログなどアートに関する情報源が豊富なため、調べ物に役立つことは間違いない。誰でも無料で利用できるのが嬉しい。
リニューアル・オープン時に新設された「こどもとしょしつ」もオリジナリティのある館内施設のひとつだ。

おわりに

人々の脳と心を刺激するこの場所で、次はどのような展覧会が開かれるのか。現代アートのスペースとして、これからも注目していきたい。

MOTはいつでも、“おかえり”と迎えてくれるだろう。

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東京都現代美術館
〒135-0022 東京都江東区三好4丁目1−1
TEL:03-5245-4111
公式ホームページ

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