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徒然なる相想草【詩・小エッセイ】

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ルリニコクみみみの詩・小エッセイをまとめました♪
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#ヴァイオリン

幸福な世界

幸福な世界

わたしを取り巻く土壁の
中で開かれた大宴会

ああ貴方はここで大きく腰を振って
過去をなかったことにする

本当は、わたしが受精するはずだった
ドス黒い貴方の松脂を
生肉の目立つ赤子同士が奪い合う

イニシアティブを取り合いながら
尊大な母性を見せ合って
尊大な惰性を身につけていく

赤子たちは黒い子羊を産んで
その肉をわたしと貴方は
美味そうに骨まで喰らう

きっと貴方のスキーム通り
美しくて幸

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紫のヴァイオリン

紫のヴァイオリン

枝のような腕が
わたしの首をつかみ
すこし窒息する

呼吸が
三分の一くらいになって
下のほうが疼いてきたころ

あなたはわたしを
ただひたすらに
力のかぎり

わたしは天井をあおいで
舌は夜の海のように
水気をまして裏がえる
星が散るような愛に

わたしはさらに窒息する
紫色のヴァイオリン

/ルリニコクみみみ

午後の紅茶

午後の紅茶

シャコンヌは亡き妻のために書かれた。
そう言ってあなたは切なそうに
あの曲を奏でる。

きっとあなたには
バッハの気持ちなどわからない。
300年前でも人の気持ちは人の気持ち。
イマを唄わないあなたにはわからない。

美しさって副産物だと思うの。
格好の良さもだわ。
耐えきれず飛び出た血の吐瀉物を
伸ばしてそれを魂の羽毛で鳴らして
はじめて音楽は成るの。

いえ、それだけじゃない。
芸術ってきっと

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