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多様なストーリーがもたらすもの 対話するリーダーシップ#32

あるグローバル企業のアジア太平洋地域のリーダーシッププログラムを担当することにあたって学んでいることをお伝えしてみたいと思います。学んでいること、そこに関する問いをここで共有することでビジネスパーソンの方々のご参考になったらと思っています。

今回は、ナイジェリアの作家・チママンダ アディーチェさんのTED Talk「シングルストーリーの危険性」から、多様なストーリーがもたらすものについて考えたいと思います。

チママンダさんが幼少期に読んだのは、殆どがアメリカ、イギリスの本だったそうです。小さい頃から本が好きで、自分でも書くようになりました。主人公は、白人で、青い瞳で、りんごを食べて、天気の話をして・・・ご自身の実際の環境とは全く違うストーリーを書いていたそうです。それは、明らかに自分が読んできた本のストーリーの延長にあったのだと思います。

また、お家には地方からお手伝いに来る子供がいて、その子の家に食べ物を送っていたのだそうです。お母さんからは「彼のお家は貧しくて食べるものがないのに、どうして食べ物を残すの」としつけをうけていたそうです。このため、地方の彼の家を訪問した時、ラフィアの美しいカゴを彼のお母さんが持ってきてくれた時に、本当にびっくりしたそうでした。貧しいという一つのストーリーだけを信じていたからです。

チママンダさんは19歳でアメリカの大学に進学しました。大学の寮のルームメイトは、チママンダさんが英語を話し、マライアキャリーを聴いていることに驚いたのだそうです。アフリカといえば、貧しくて紛争が絶えない・・・そういう一つのストーリーしか、ルームメイトは知らなかったからです。アメリカに来たことで、チママンダさんは自分がアフリカから来たことを初めて強く意識したそうで、残念ながら偏見、メディアが繰り返すストーリーに直面したのだそうでした。

ビジネスリーダーにとって、このことにはどういう意味があるのでしょうか。
最近は当たり前のようにダイバーシティ・インクルージョンという言葉が使われるようになりました。日本の職場では、人種的な多様性はあまりないかもしれませんけれど、ご自身では多様性をどのように捉えられているでしょうか。

同じ仕事をしていても、その仕事をどう紹介するかは全く違うかもしれません。そこには、その仕事をしている方それぞれのストーリーがあると思います。そのストーリーは、その方の価値観、大切にしていること、その方らしさを反映していたり、またそれを作っているものかもしれません。ご自身のキャリアをどう語るかも、ご自身がその中でどういうストーリーを見出してきたのかによって、全く変わってくると思います。

仕事のことだけでも様々なストーリーがあります。それ以外の面では、一体どんなストーリーがあるのでしょうか。私自身、最近になって、小さい頃に住んでいた場所をとても懐かしく思い出すことがありました。その話を父にしてみると、とても喜んでくれました。転勤で色々な土地に住まわせなければいけなかった・・・と思っていたようです。ストーリーは、ご自身のことであっても、埋もれてしまっていることもあると思います。時に、ご自身の人生を振り返ってみると、ご自身の中の多様性にも気づくことになるのではないでしょうか。そのことが、ご自身の周りにいらっしゃる方々の多様性にも気づくことになる、新たな面に気がつくことにつながるのではないでしょうか。結果として、心理的安全性につながっていくことになるのではないでしょうか。よりよい職場、仕事には、多様なストーリーが流れているのではないでしょうか。

今回の問い
ご自身の価値観や人となりを作ったストーリーには、どんなものがあるでしょうか
ご自身のストーリーを振り返ってみると、どんな気づきがあったでしょうか

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