見出し画像

自分の「常識」や「正解」を押し付けない。#やさしさってなんだろう

「徳さんの編集はやさしい」

昨日参加したsoarの編集者ライター懇親会で、ライターのニシブマリエさんがそんなことを言ってくれた。そんな言葉をかけてくれるマリエさんがやさしい。

自分の編集がやさしいと思ったことはないけれど、私が編集するときに意識していることは、やさしさにつながるかもしれない、とも思った。soarのハッシュタグキャンペーン #やさしさってなんだろう を眺めていると、やさしさの定義はひとそれぞれ。

必ずしもできているわけではないけれど、自戒も込めて、私が編集するときに意識していることから、「やさしさ」について考えてみた。

やさしさとは、自分の「常識」や「正解」を押し付けないこと。

私の編集者経験のなかで持つ「常識」や「正解」は私だけのもので、他の人に必ずしも通用するものではない。置かれた環境や人との出会い、これまでの経験によって、抱く「常識」も導き出される「正解」も人によって異なる。自分のなかの常識が覆されることも、正解が変わることもある。

だから、著者やライターさんが書いてくれたものを、自分の常識や正解とすり合せて、否定はしない。違和感を抱くときや魅力が伝わりきってないと思うときは、「私は」という前提で意見を述べたり、「自分だったら」と提案をしたり、どういう意図でその言葉を選んだのか相手の話を聞いたりする。

自分の価値観のなかだけで物事を捉えて、否定をしてしまうと、新しい発見はできないし、可能性を狭めてしまう。やさしさには「想像力」が必要だ。

編集者の仕事は筆者の考え方や世界観など、言葉を通じて、その魅力(才能)を最大限に引き出してかたちにすることだと思う。その「答え」は相手のなかにあって、自分のなかにはない。自分の常識や正解を超えたものに出会えるから、この仕事は楽しいのだ。

やさしさとは、信じきること。

一度信じると決めたなら、最後まで信じきる。たとえ、周りに否定的な言葉を投げかけられたとしても、誰に何を言われようとも、目の前にいる相手と自分の関係性のなかで、向き合う。筆者と編集者に信頼関係がなければ、いいコンテンツはできないと思う。相手に信じてもらえるように、まずは、自分が相手の才能や言葉、その存在を信じきること。

筆者やコンテンツを信じきっていれば、届いていないと感じたときに、いくらでも工夫をすることができる。本なら置く場所を変えたり、POPをつけたり、イベントをしたり。記事ならタイトルを変えたり、ツイートをしたり。信じる気持ちがその原動力になる。

やさしさとは、「大丈夫」と背中を押すこと。

私は編集者でもあるけれど、ライターでもある。筆者として、本や記事を書いていると、自分のことだとなおさら、これは面白いんだろうか? 自分が書いていいんだろうか?と不安にかられることがある。自分の体験や主張を世の中にオープンにすることへの怖さもある。そのときに、「大丈夫です」と自分を信じきって、背中を押してくれる存在は大きい。一番の読者である編集者が「面白い!」と言ってくれるからこそ、安心して世の中へ出ていける。

筆者として、原稿を書いたときに、一番初めに読んでくれる編集者の言葉の重みを感じているからこそ、編集者の立場になったときは、できるだけすぐに読んで一言でも前向きな感想を伝えるようにしている。そして、「面白い!」と心から言えるところまで、伴走する。

ここまで書いたことは、私が娘に対して、大事にしたいことでもある。子どもにとっては、生まれ育った家庭の親が「常識」や「正解」になりやすけれど、世界はもっともっと広い。娘には私たち親以外の人にたくさん出会って、家庭の外へ出ていって、多様な価値観に触れて、自分だけの「正解」を見つけてほしい。そして、更新し続けてほしい。娘が安心して広い世界へ飛び出していけるように、親として私は、娘を信じきって、「大丈夫!」「いってらっしゃい!」と背中を押したい。

やっぱり、子育てと編集は似ているなあ。

編集者としても、親としても、やさしくありたい。

なんとも抽象的な話になってしまったので、最後に、冒頭の言葉をかけてくれたマリエさんがsoarで書いた記事を紹介したい。

マリエさんは筆者としてこの記事のなかで、過去の自分の痛みと向き合い、この取材で得た気づきについて深く潜り込んでくれた。たぶん、途中で逃げ出したくなっていたと思う。初稿から何度も何度もやりとりを重ね、なかなかの難産ではあった。世に出るまでの道のりは長かったけれど、取材対象者である山田うんさんとマリエさんの最高点が重なったすごく「面白い」記事になったと思う。編集者として、自信を持ってそう言える(だから、少しでも多くの人に読んでほしい)。

#やさしさってなんだろう #soar #編集 #子育て

読んでくださりありがとうございます。とても嬉しいです。スキのお礼に出てくるのは、私の好きなおやつです。