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短編小説の森

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私が書いた短編小説たちの倉庫です。カテゴライズしたマガジンにある作品も、全てここに集めています。   ※五十音順に掲載
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2022年9月の記事一覧

会えないあなた [短編小説]

「もう、いったい何なのよ」  薄曇りの午後、秋風に吹かれながら気持ちよさそうに庭の草むし…

瑠璃
2年前
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雨の日は相合傘で [短編小説]

 ずっと闇の中を走っていた電車が一気に地上へ出た。いつもならオレンジ色に染まった夕暮れの…

瑠璃
2年前
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季節はずれの動物園 [短編小説]

 最後に動物園へ行ったのは、いつ頃のことだったろう。小学生の時だったろうか、それとも中学…

瑠璃
2年前
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蒼穹のカンパネルラ [短編小説]

 探し物は、ふいに目の前に現れた。懸命に探していた時はどうしても見つからなかったのに、諦…

瑠璃
2年前
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トウモロコシを肴にバーボンを [短編小説]

「ちょっと近づかないで、すごく臭いわよ」  急に耳慣れた女性の甲高い声がフロアに響いた。…

瑠璃
2年前
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流れ星が降る夜に [短編小説]

 紹介先の最寄り駅が待ち合わせの場所だった。時間に間に合うように事務所を出たつもりが、思…

瑠璃
2年前
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野ブタと黒ヤギ [短編小説]

 八木さんは、いつも私のことを「のぶたちゃん」と呼ぶ。それは私の苗字が信じる田んぼと書く「信田」だからなのだが、初対面の人はほとんどそうは思わない。どうしても、少しぽっちゃりとした私の容姿からつけられたあだ名だと勘違いする。誰もが真っ先に想像するのは野ブタなのだ。  この勘違いは、名刺交換をすればたいがいは相手も気づくものなのだが、中には最初に受けた野ブタの印象が変わらない人もいる。そういう人は「信田」を「のぶた」と読んでくれない。「しんでんさんですか?」とか「しんださん?」