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夢を追い人

ふと空を見上げた。

「あっ、飛行機雲!」

少年がじっと空を見る。
吸い込まれるような雲ひとつない空に、少年の星のような明かりが地面に映し出される。

さあ、旅の始まりだ。
そう言うと、青年は立ち上がった。それは生きる意味を彷徨う囚人のように。

過去に少年は言った。
君は誰だ?
目に映るもう一人を対峙して。
君は僕さ。
僕が君だよ。
その言葉に、僕は慄く。
違う。僕は君じゃない。
こんなのは僕じゃない。
はち切れそうな風船が、より膨らむ。

萎ませるためにここに来たのだ。
風船がそう言う。

汗を拭いながら、崖をよじ登る。
登った先には何があるのだろう。
きっと、素晴らしい形が待っているはず。
僕は羅針盤を取りに行くのだ。

風船の行く末を空が笑う。
これからの形を見届けるかのように。

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