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首里の馬を読んだ

面白かった。

なんだかここ最近読んできた芥川賞作品達と比べて、大人な文という印象だった。

剥き出しにされた心情みたいなものはなく、淡々と

拙さから滲み出る人間性みたいなものはなく、淡々と

こう、いわゆる大衆文学的な、興奮させる面白さではなくて、しっかり文学っぽい物語性の放棄があるけど、それでもどちらかというと、小説っぽい、しっかりこっちに寄り添ってくれる文章だった気がする。

ただそこにごろっと転がっている文ではなかった。

あーあとは、不倫やら曖昧な関係やら、そういう人間のいやーなとこが出てこなかったのも大きいかもしれない。

いい人なんだ、みんな

僕としてはこっちが現実の世界観であって欲しい、

奇妙さで引きこむっていうのはやっぱり小説の常套手段みたいだ。主人公のするバイトは奇妙だ、

ただそれは、月の裏に二万年前の人類の遺体があるみたいな、ミステリーではなく、そんなものがあるのか、という物珍しさの奇妙さ、別にそこに重大な秘密が眠っている雰囲気も醸し出せるし、なんのことはない、ただそれだけなのだとも言える奇妙さ、だった。

うーん何が面白かったんだろう

面白かったというより、好ましかったのだろうか

時々出てくる文章が好ましかったし、この世界観が好ましかったし、情報の記録保存整理は僕も好きだから、

ただ世界は続いていく、そういう世界観がその淡々とした物語の進行から感じられた

かつては顔の広かったおばあさんも年老いて静かになり、そしてたった二人に直葬され静かに人生を終える。

そうそう、葬式も通夜もなしに火葬するのを直葬というのを知れた。なるほど自分は直葬を望んでいたんだと勝手に思って得した気分だった。こういうとこも好ましかった。

2021/09/20

そうか、この日記然り、食事の写真然り、僕も主人公と似たような行為をしてるんだ

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