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【読書感想文】光の帝国 常野物語

膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちから。
「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。
穏やかで知的で、権力への志向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそり暮らす人々。
彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか?
不思議な優しさと淡い哀しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短編集。
文庫本裏のあらすじ

※ネタバレを含みますので、閲覧にはご注意下さい。

物語への没入感がすごい

久しぶりにファンタジーというジャンルを読んだ気がしますが、良いものですね。子供の頃のような読書体験を味わえました。
子供の頃、父がハリー・ポッターを読み聞かせしてくれました。(今思えば、読み聞かせする分量の本では全くないと思いますが…)あの頃の私には、現実と物語の世界の境界なんてなくて、いつか自分もホグワーツに入学するのだと本気で思っていました。けれど、いつの間にか良くも悪くも大人になってしまって、意識しなくてもその境界線を引けるようになっていました。けれど、この物語を読んで、久しぶりにその境目が曖昧になる感覚を味わえました。

ひょっとして…

この物語を読んでいて、ふと思ったことがあります。

ひょっとして恩田さんは常野一族の末裔なのでは…。

この物語は、実は先祖代々語り継がれてきたお話で、常野一族が完全に忘れ去られてしまう前に書物に残そうとされているのではないかと思わず勘ぐってしまうほど絶妙に現実社会と常野一族が溶け合っていて怖かったです。短編一編一編が点在しているのも、説話集のようで、こんな神々しい物語を0から生み出せるなんて読み終わった今もにわかに信じられません。やっぱり作家さんってすごいですね。



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