見出し画像

「たとえあなたを忘れても(第3話)」"美璃のことは忘れへんよ"という言葉のふわふわ感の刹那さ

今回は萩原利久が記憶をなくすことはなかった。だからこそ、いつまた記憶をなくすの?という見方をしてしまうから刹那いとも言える。そんな気持ちは、母親役の壇れいの話の中に凝縮されていた。

檀れい、「VIVANT」でも裏切る駐在大使の役をやっていたが、どちらかといえば美形なのにアクのある役が回ってくることが多い。こんな優しい母親役はかなり珍しい気がするが、自分が母親と認識してもらえないという役をなかなか上手く演じている。それを堀田真由と話す雰囲気も良かった。

そう、最初にコーヒーショップの前で堀田と出会わせて、その後で岡田結実と話してる時に再会する感じもなかなかドラマ的にはスムーズな感じではあった。

そう、今回は、堀田と岡田の距離感も近づいている。岡田は、萩原と付き合うのは覚悟が必要だという。確かに明日になったら自分のことを全て忘れてると思ったら怖い。だが、そういう人と出会ったということが何かの縁なのかと思いながらも人は前に進んでいくのだろう。岡田のそれを受け入れて萩原を見守る演技がなかなか良い。あまり、岡田結実という人を女優としてみていなかったが(お父さんの顔が出てくるからだ)、こういう芯の強い役は彼女にあっているようだ。堀田の少し引く感じの演技に対し上手くコントラストがとられている。

そして、今回も廃墟のデートシーンが出てくる。なかなかこの雰囲気がドラマの刹那さに繋がっているのは確かだが、初回からずっと同じことが繰り返される感じが辛くも感じる。だから、今回は医師の風間俊介に診せようというスタンスが出てくるわけだ。そこで何が起こるのかはわからないが、まあ、このお話、都合の良いハッピーエンドのための風間俊介ではないだろう。

ある意味、風間がこの役をやっているから、辛い診断が出てくる気もする。風間の演技は常に優しいが、その向こうに危険な臭いを感じさせるのは、「金八先生」の時からあまり変わっていない気はする。でも、こういう役を演じられる貴重な役者さんではあるので、ジャニーズ問題で出番が少なくなるのはやめてほしい数少ない人だと思う。

今回は、携帯ショップでクレーマーに絡まれるシーンはあったものの、堀田真由の日常は至って幸せに向かっていた。ただ、本職であるピアノが弾けない悲しみみたいなものも抱えているわけで、風間が話す、病院でのコンサートのシーンがこれから出てくるなら楽しみである。

堀田が萩原に出会ったことで、萩原の世界も広がっていくわけだが、その広がりが一瞬で消える可能性があるという設定は、視聴していて結構なスリリングな空気感を持ち込んでいる。このドラマの空気感にハマるかハマらないかというところで好き嫌いは別れるのかもしれないが、とても危うい心の風景を優しくさすってあげるようなドラマである。この混沌の時代にほっとさせるコーヒーのような匂いが好きだったりはする。

この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?