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「うきわ〜友達以上、不倫未満〜(第4話)」妄想の中に見る、本心と虚い

このドラマ、普通の不倫ドラマみたいにスリリングに事が展開しないところが面白く、それがリアリティに繋がっているのかもしれない。

先週、個室で食事をすることになった、森山直太朗と門脇麦。このまま、更なる展開を迎えるのかと思ったら、そんなことはなく、森山直太朗が、妻の西田尚美のことに関して、過去を吐露する流れに。いわゆる、妊活がうまくいかないで、夫が勧めた陶芸教室で、不倫相手を見つけてしまうという、皮肉な流れを坦々と語る森山。そして、それを聴く門脇と、そこに色気もフェロモンもなく、ただただ、二人は現在の生活の不満を癒しているという感じ。その空気を本当にこのドラマはうまく演出してある。

そして、森山の回想に出てくる、西田尚美が、なかなかすごい演技をしている。結婚してから、不倫に至る過程のドラマの中で、顔がどんどん変化していく感じに西田尚美の女優としての凄みを感じた。微妙な笑顔の変化で、年齢も空気も演じてしまう感じは、なかなか静かな迫力で視聴者に迫る。西田がこの役をやっているということが、このドラマのテーマをうまく増幅している感じだ。

それをじっくり見せたかったかどうかは知らないが、この過去の吐露のシーンで番組の半分を費やし、今回はそこでタイトルロールが入ってくる。途中で切らない方が良いという判断か?最初から、意識した脚本なのか?どちらでも、なかなか最近のドラマとしては異端な形が見えた。

そして、後半、気まずくなった門脇は、森山が気になって仕方ない。それは、男としてとか、性的な何かだとか、そういうものではない。どちらかというと、自分のやるせなさを彼のストレスフルな日常に同化している感じなのだろう。

だから、街を歩いている人たちが皆、森山に見えてしまったり、屋根裏でお隣さんを盗聴したり、何か、とても不思議な世界に入り込んでいることが、視聴者をも、淫靡ではない、何か不思議な不倫世界に引き込むわけだ。

食事のシーンで、上の写真のように、お面を被せる演出。まさに、表現したいのは、能や狂言のような、内なる心をデフォルメしようとする演出をしたいのであろう。

もはや、ここまでで、それぞれ4人の心は元に戻らないような構図。ここから、それぞれがどのようなアクションに出るのか?そして、本当にこのドラマが言いたい帰結点はどこなのか?あまり、心の中以外でドラマが起こっていないこともあり、であるからこそ、スリリングなドラマに仕上がっているだと思う。団地を覗き見しているような雰囲気は、昔ながらのものなのだが、そこにある心根は、結構新しく感じるのが、面白い。

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