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「ドクター・デスの遺産 BLACK FILE」綾野剛x北川景子xドクター・デス 役者で魅せる映画

中山七里氏の原作を深川栄洋監督が映画化。綾野剛と北川景子主演というと、日本映画としてはかなりシャープな感じがするスター映画というイメージの予感。北川ファンの私としても、観るという選択しかない。北川景子主演映画は昨年の「ヒキタさん、ご懐妊ですよ」以来、一年ぶり。この後には「約束のネバーランド」「ファーストラブ」と公開映画が並んでいる。実に楽しみな年末年始である。そして、子供を産んで、復帰もしたように、また美しい姿を見せていただきたいと思う。

そして、この映画である。安楽死を請け負う「ドクター・デス」という人物を追って、前半は、警察側からの洗い出しだけで終わり、いわゆる犯人側からの動きがないので、映画としては少しかったるい感じ。そこを、綾野と北川の関係を見せることで、なんとか持たそうとするが、彼らのキャラクターが今ひとつ見えてこないままに終わってしまう。スターの見せ方がわかっていない。警察の中に岡田健史がいる。「MIU404」以前の綾野剛との共演だから、あまり関わり合いがないが、これも縁だったのか?こういう映画の初動はあくまでも、ファンに印象深くすることが必要だ。そして、キャラクターを一気に観ている方にシンクロさせないといけないのではないか?この映画に関わらず、その辺りは、まだまだ日本映画の演出陣がうまくないところに感じる。

そして、この映画、宣伝にも隠してある、ドクター・デスが出てきてからが見どころなわけである。出演者の中にその名の知れた俳優の名前がない。そこのところは、演じた俳優さんにも確認とってあるのだろうが、なかなかの冒険。観ている方にも、「誰?」という一瞬、考えさせるのも映画に引き込む上手い演出だと思う。ということで、この後はネタバレです。観ていない人は読まなくて良いです。

そう、この犯人であるY.Kのおかげで、映画はサスペンスとして完成している。なかなかの汚れ役をある意味楽しんでいるのかも知れない。少し前には、テレビで医者の役をやっていたことが、結構リアル感をこちらに与えていた。今、テレビでやっている不安定な主婦役は感じるものはあまりないが、そういう認識があるからこそ、こういう悪役は興味深かった。何度もできる役ではないので、本人も気合入っているようにも感じた。

ただ、そこに「安楽死」という大きなテーマが今ひとつ前に出てこないことは残念。綾野の娘が安楽死の標的になることで、「死」というものを勝手に操作するべきではないという無理矢理感がある。もっと一般的な意識の拠り所が最後にほしかった。

北川のアクションは、テレビドラマ「探偵の探偵」でも観ていたので新しさはなかったが、もう少しアクションするときに大きさを感じさせて欲しい気はする。演出側の撮り方でもそういう意識がない気がする。綾野のアクションも含め、スクリーンに映えるものを撮れていないのは減点材料。

追う方と追われる方のバランスが悪いということだろう。観客がスクリーンを凝視せざるを得ない状態になっていないし、キャラに引っ張られてもいない。最後の方は、犯人が全て引っ張っていく感じで、その対応の仕方は主役が引きずられている感じになってしまっている。

北川のキャラの頭脳明晰が見えるところは、似顔絵のところだけなのも残念。バディものとしても、二人が完全に溶け合って行動する感じに映像で見せられていない。原作を追いかけることがやっとという感じなのだろうか?と思う。映像としてどう原作を崩すか?ということをもっと考えて欲しい気はする。

北川景子、次回作は「幻のネバーランド」。綾野剛「ヤクザと家族」ともに楽しみだが、演出陣が彼らをいかに料理できるかが肝ですね。



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