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「グランメゾン・パリ」料理というものをエンターテインメントに見せることの結果が三つ星ということなのかもしれない

今年の映画納め。とはいえ、中盤はほとんど映画館に行く時間もなく、いや、進んで、みたいような映画がなかったというのが本音か。あとは、3ヶ月くらいでストリーミングに出てくる今の状況に「なんかなー」と思ったところもあります。そう考えると、本当に日頃映画などに興味ない皆様を映画館に連れて行くのは大変なのですよ。

で、この映画を見たのは30日。この日封切った(今はデータだから封切りという言い方は変なのだが、気づいていますか?)この映画を観る。年末で、それなりに集客力がある映画をやっているということで、シネコンは久しぶりに混んでいた。というか、私は平日の空いた時間に行くのが普通なので、こんな混んでる時に来たのは珍しいということ・・。

黒岩勉脚本、塚原あゆ子監督での映画化。前のテレビシリーズの中埋めをするスペシャル版も同じスタッフでこの二本、よく作り上げたという言葉でいいだろう。フランス料理をエンタメとして見事に映像化したと言っていい。まずは拍手と言っていいのではないだろうか?映画として見応えのある約2時間(117分)にはなっていた。

監督は、この間まで放送していた「海に眠るダイヤモンド」も演出していた塚原氏である。あのドラマを見ていて、ダイナミックな演出が目立ったが、ここでも、そつのない、料理が主役の映画に仕上げていた。パリを舞台にしても冷静にしっかりとドラマ作りができていて、もう、映画館に足を運んでも安心してみていられる監督になったと思う。テレビドラマ出身の彼女が映画の監督賞総なめみたいな時代も近いと私は思う。2025年は、このあと、坂元裕二脚本の映画も待っていますしね。楽しみです。あと、映画賞決める人たちが、テレビドラマのスピンオフ映画をいまだによく思わないのは、もう時代錯誤ですよ。映画とテレビドラマのボーダーラインなど、とうの昔に壊れてしまってますから。これからは両方撮れて評価される時代ですよ。これは映画馬鹿と言われる人たちへの言葉です。映像は全て同じ舞台で語られる時代になってきている!

で、物語は前半は、フランスで星二つしか取れない日々が続き、シェフの木村拓哉はいつも以上にイライラしている。このイライラ感を出すためなのか、前半部はすごく顔に皺が多いし、何か年齢を感じてしまうのは私だけだろうか?そして、イラついた人間性を示す台詞回しは脚本によるところが大きいのだろうが、ただのイラついたおじさんになってしまっているのは、ちょっと50歳過ぎた俳優のやることではないのではないかと思った私。そう、彼がヒーローに見えてこないのだ。観客はスタッフに同情してしまう。この辺り、木村拓哉の演技の限界というところなのだろうが、木村の周囲はもう一度彼のブランディングを明確にしたほいがいいと思う。

そして、鈴木京香をクビにして、韓国人のパテシエにもキツく当たるが、彼が借金をして反社の人間に追われるのを助けたりもする。そう、心があっちこっちに行ってしまって、これではまともなフランス料理などできないのはみている方がわかる。

だが、流石に鈴木たちも木村と長く付き合っているわけで、彼にできないことをやろうとする。素材のいい肉を買えるように鈴木は業者に入り込むし、パテシエを守るために迷惑をかけたチーズ業者からそれを買取、周囲の彼らを見る目が変わってくる。この辺りは短期で盛り返す彼らのありようをうまく紡いでいると思う。

そして、後半は、店を守るために星3つを取るために、全ての考えは原点に戻り、誰もみて、感じて、食べたことのない、多言語化されたフランス料理を作る過程が示され、ここでの木村の顔は優しさに満ちている。この前半と後半で芝居を変える技は今までできてこなかった彼であるが、ここで新境地を見出せたのかもしれない。最も、前半のイケすかない彼は「教場」などで鍛えたものだろう。そう、ジタバタした結果が出ている。

で、クライマックスには、店のテナントの主人に対して料理を食べてもらうバトル。その中にはまた冨永愛がいる。食事に対してのこういう世界的なインフルエンサーっているにはいるのだろうが、それほど重宝されるのかは少し疑問。だが、彼女が映画の中で出す、料理に対する言葉はなかなかキレが良い。もちろん、それが脚本のキレの良さである。

そして、ここでも食べ終わってからの冨永愛が目立った。最後に唐突に木村にハグをする。長身の冨永は木村を飲み込むようにw。でもこのシーンが印象になるように映画は作られている。料理映画というのは、映画の中で匂いも味も使えない、視覚と聴覚だけでいかに美味しく見せられるか?そう考えれば、この映画は及第点ではある。そして、テレビシリーズを知らなくても、映画のフォーカスは三つ星を取ることだけなわけで、感動はできるだろう。正月映画という体裁では、素晴らしい作品であると思った

奇しくも、1月10日からテレビシリーズ「孤独のグルメ」の映画も封切られる。こちらもパリが出てくるようだ。比較する必要はないが、美味しいものを観させていただければと思っています。

あと、これを書いているのは12 月31日の大晦日です。今年も一年、多くの皆様に、このnoteつきあっていただきありがとうございました。来年もよろしくお願いします。


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