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「自転しながら公転する」牛久で大仏に見守られる青春劇

山本文緒原作の小説を3回シリーズのドラマ化にしたもの。大仏が象徴的に聳える牛久の街を舞台に、30歳の男女が出会う青春劇である。ふた昔前なら30歳の恋愛劇は青春劇とは言わなかっただろうが、今ならそんな出会いはいっぱいあるわけで、特に違和感はない世界が描かれている。

なかなか、この題名が良いですよね。「なんの話?」と気になるところが良い。そして、この題名の意味合いは、早々と主役の藤原季節の口から語られる。思った通りに地球のことであるのだが、それを人間が生きることに重ね合わせてるのは面白い。そう、自転だけして生きていれば簡単なのに、その上に、現実の世界を公転しているのが人間の生活だし。それは、地球の公転周期で季節を感じてるということにも繋がっているわけだ。ちょうど、今、地球は太陽を一周するところにあり、そういう時期にこのドラマを放送するのはなかなか良い時期なのかもしれない。

主役、松本穂香が働いている会社はなんの会社かよく分からないが、作業着を着ているのを見ると、まあ、工場か配送取次的なところか。そして上司と回転寿司を食べに行って、そこのバイト店員である藤原季節の態度に怒り、文句を言う松本。その日に、彼にもう一度会うことになるとはこのときは思っていない。松本が帰ろうと思ったら車のバッテリーが上がって動かない。終バスも無くなって、泣いていると、そこに通り過ぎた藤原が助けてくれる。そして、お礼をというと「一緒に飲みに行こう」と言う藤原。ファーストインプレッションがすこぶる悪かった藤原だが、そのまま打ち解けて身体も許す松本。こういうところの流れは、ある意味、都会よりも早い田舎の絵図ではある。そして、そこから、彼が中卒であることがわかって戸惑ったりもするが、彼は身体を求めて家までやってくるし、こう言うドラマは昨今の都会の青春劇ではない感じはする。

松本穂香はリアルではまだ26歳である。だから、少し背伸びした役なのだが、いつもの松本らしく、ノホホンとした演技がこの役に合っている。しかし、とびきりの美人女優さんではないのだが、目がキラキラ印象的で、ちょっと周囲についていけないような役が実に上手い人だ。そして彼女の友人が野村麻純と小林涼子。野村は、この間の「うちの弁護士は手がかかる」もそうだったが、結構勝気な役が増えてきたのか?まあ、なかなか貴重なバイプレイヤーとしてはとても印象的。彼女はリアルで33歳であり、こう言うコンビネーションでも違和感なくドラマが作れるのが現代なのであるなと思ったりもした。ちなみにもう一人の主役の藤原はリアルで30歳である。

ドラマ1回目は、藤原が松本の家を訪ね、中卒であること、今、無職になってしまったことなどを悪気もなく話ながらも、彼の人間性の良さをアピールできたところまで。でも、この1回目で、藤原の性格の2面性みたいなのはしっかり見せているわけで、次がどうなっていくかは想像できるところもあるが、興味深いところだ。

ドラマとしての新しさはあまり感じないが、松本と藤原コンビはなかなか良い感じであり、あと2回楽しみではある。


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