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「シェフは名探偵」料理と記憶と優しさと。ハートフルな空間に美味が感じられれば良いかと…。

「珈琲いかがでしょう」の枠で続いて始まったドラマ。前作と同じように人の心のありかを探るようなハートフルなドラマのようだ。主演は西島秀俊。朝ドラの気象予報士姿も、なかなか決まっていたが、ここでは記憶と勘で勝負するシェフをシェフを好演している。

そして、題名は「名探偵」だが、刑事事件がビストロで起こるわけではない。お客様のトラブルに対して、お節介にシェフが立ち向かうということだ。この辺りは洒落ているし、フランス映画的なものになるのかもしれない。原作は短編の連作のようだから、それを読み進むような味わいでドラマも進んでいく感じ。

今回の2つの話。まずは、好き嫌いが激しい上司に恋したOLが、彼の妻には勝てなかったというお話。話を聞けば、いろんな食材が使えない。だからこそ、シンプルなものしか受け付けない身体。そこがわかっていて、妻は味よりも栄養を大切に料理を作っていたという話。まあ、男と女、どこまで気遣えるか?というところなのだろう。とはいえ、食事の話から、そういう部分に話を展開させられるシェフは、普通に素敵である。ただ、美味いまずいの向こうに、客の心と舌を感じてこその接客業ということだろう。

もう一つの話は、チョコレート屋の詰め合わせの数が素数であることの謎。割り切れない数であることで、端数が生まれ、多くの人で楽しめるという話。ここに出てくる男も偏屈だが、その偏屈の、向こう側の心を読むという話。まあ、確かに2つの話とも「シェフは名探偵」という題名がぴったりのドラマではあった。

そして、ビストロで働く人々もなかなか個性的で良い。スーシェフの神尾佑、ソムリエの石井杏奈、そして、新米ギャルソンの濱田岳とコンビネーションは最初からなかなか良い。濱田がナレーションもやっているのだが、BSの「アナザーストーリー」を思い出してしまった。意外に声が印象的な濱田さんなのだ。彼もまた西島の記憶の中にあったことで、ここで働くことになったという話も、私的には好きである。そう、どこかで誰かが見てくれていて運が開くというような話は好きである。

あと、石井杏奈が、いつもより柔らかい感じの演技で素敵である。こういう役だと、少し若くも見える。どういう活躍をするのかは楽しみだ。

とにかくも、西島さんが主役として締めているので、安心して見られるし、雰囲気も悪くないドラマである。人の日常の心の乱れを解消するという点では「珈琲いかがでしょう」と似たような世界だが、少し、高尚なフランス料理という場でどんなドラマが繰り広げられていくのか、楽しみではある。

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