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「シェフは名探偵(第7話)」友人を思う二つのストーリー

レストランとは、親族、友人、恋人など、大切な人との心を食事を通じて繋ぐ場所であったりする。だからこそ、そこにはお客様の数だけストーリーがあるわけだ。どんな仕事も、ストーリーのなかの一員として自分が動けば、その意味は大きく変わる。ここでの西島秀俊演じるところのシェフはお節介だが、お客様を愛しているからこそ、そのストーリーの中に入っていくという感じだろう。そこが見ていても心地よい。

今回は、2つの友情の話。一つ目は、金持ちの女性が、知らない間に友人たちに、たかられていたという話。ワインを持ち込みにして、バッセン料をごまかし、料理もコースではなくアラカルトにして価格がよくわからなくした上で、わからないように金持ちの女性に多くを払わせているという話。まあ、そんなことを考えること自体、セコイ話なわけで、そんなのは友人でもなんでもない。心の中のさもしさが悲しくなる。それをするために使われていた友人が、真実を話し、誤り、友情を確認し合う話である。この流れを推理するのはなかなか難しいが、長くレストランに勤めるとこういう人たちもいるのだろうな、と思える話でもある。最後に二人の友が、安くても心のこもったワインで乾杯するのは良い絵でした。

そして、もう一つは、「牛肉のタルタルステーキ」をめぐるお話。妊娠中に理由はわからないが、トキソプラズマ感染をしてしまった女性が、それを義母の仕業にしようと、メニューにはない「牛肉のタルタルステーキ」を出してもらう。義母が他人に食事を分ける癖があるということを当て込んでの施策だった。だが、義母もそのことを見越して、事前にその料理があるかを聞きに来る。全てはバレていたのだ。そして、西島は生肉を使わない「牛肉のタルタルソース風」の料理を出したという。これは、友情というか、親族への気遣いの問題だが、皆の心がスッキリすれば良いのである。まあ、言われない限り、ここまでするシェフはいないだろう。

今回もなかなか心地よい二つの話だった。考えれば、オー・ヘンリーの短編のようでもある。ちょっとした日常の、気遣いや、嫌がらせ、嘘のようなものでバランスがとられている世界を見透かして、少しバランスのありようを変えてあげる。そう、このレストランは心の整体のようなものだと思えるようになってきた。

なかなかウィットのとんだドラマの源泉は、原作小説にあるような気がする。是非、読んでみようと思うようになった次第であります。


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