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「最愛(第10話)」最愛の人がいる人生の向こうには嘘があるという現実?

なかなか、わかりやすくまとめられた最終回だった。そして、犯人は静かにいなくなり、証拠もなく、皆が平穏のままに新しくリセットしていくというラスト。そこに出てくる吉高由里子の顔を見て、視聴者皆が最愛の表情をするように作られた構造ということなのかもしれない。

そして、人を守るということは、簡単ではないが、時に人を殺めるということに繋がってしまうこともある。そして、それを隠し続けている人は、意外に多いのかもしれないと思ったりする。そう、陰惨な事件があり、亡くなってしまった人は本当に不幸なのだが、このドラマの場合、あまりそう感じない後味なのは不思議だったりする。そして、その死に関与した井浦新にも、それほどに怨恨みたいなものも感じない。結局のところ、警察が捕まえられないということは、そこで世の中のバランスが保たれてしまったということなのかもしれない。そう、それがこのドラマの構造のバランス感覚の良さなのだろう。

そして、最近になく、音楽とカット割の妙、そこに役者の表情をうまく嵌め込みながら、パズルが仕上がっていく感じ。今年最後のテレビドラマに、ただただ感嘆させられたという私?

最初の方で、居酒屋に現れる水崎綾女、彼女もなかなか女優の顔でパズルのピースに最後にはまっていった。端役まで、全てが濃密なピースであるということだ。そういうドラマは、ほぼ脚本力によるものと思われる。

一部の人にしか、犯人は知らされていなかったと書いてあるのを読んだが、井浦新には、最初からそういう役だと教えてあったのだろうか?そういうことを考えながら、もう一度リピートしたい作品である。

そう、作り手が、パズルのピースがどうひっくり返していて、それをどう最後のピースをはめるまでに紡ごうとしていったのか?このドラマ本体がメイキングのように感じられるドラマだったのではないか?そういう意味で、非常に新しさも感じた。

そして、最終回に、何度も出てくる吉高由里子の笑顔は実に有効に機能していた。彼女の陰から陽に転じる笑顔は天使のようなキュートさである。まあ、このドラマ、彼女の笑顔を全て見返していっても、なんかキュンとするのだろうと思う。まだまだ、伸び代のある女優さんのような気もする。彼女を使いこなすドラマや映画をもっと作って欲しいものである。

「最愛」というタイトルは、多くの意味を含む感じがするが、この現在の閉塞感いっぱいの世界の中で、「最愛の人を護る」ということは、一大テーマなのかもしれないと思ったりもしている。ラスト、吉高と松下洸平が手を繋ぐ後ろ姿。そんな定型的なシーンの中に深い意味を感じたりもしました。そして、ラストは目一杯宇多田ヒカルのテーマソングがはまっていたりもして、そして、視聴者は、大きなため息をつくという感じでしょうか?

2021年ラストを飾る、名編だったと思います。スタッフ、キャストの皆様ありがとう。お疲れ様でした。そう、視聴者も含めて一体感があるようなドラマでした。

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