見出し画像

「リエゾン-こどものこころ診療所-(第4話)」精神の病は一人では治せないということ

今回の患者さんは、高校生で摂食障害。ということで、今までの小さい子に寄り添う雰囲気とは少し違ったドラマになっていました。高校生にもなると、やはり強引なことをすると、なおさら精神的な圧迫が出てくるということなのでしょう。

彼女はまず、高校受験で第一志望に落ちて、自己承認欲を得るために、ダイエット、そしてそれをSNSにあげていた。そのこと自体が友人にも褒められることで、生活が満たされ、一方で病んでいったということなのでしょう。ある意味、ダイエットというのはイメージトレーニングが結構大切なわけで、自分が元に戻るという恐怖が底なし沼のようになっていく感じはわかる。そして、過度なダイエットが、身体全体のアンバランスさを生み、格好良くないプロポーションに、それがイコール太ってるという思い込みになっていくというのも、わかりやすい話でした。

その末に、過食嘔吐を繰り返すという、末期的な状況の中で、病院にやってくるわけだ。だが、院長の山崎育三郎は、生活習慣の注意はするものの、過度な治療は行わない。心の病は、ハンドルの切り方一つで患者を死に追いやることがあるということなのだろう。

そして、その辺の難しさを松本穂香が昔のアルバイト仲間に打ち明けるところで、表現していく。自分が発達障害だというカミングアウトをすると、良き仲間たちは、みんな自分もおっちょこちょいだとか言って慰めてくれる。そう言われるとなお辛いという話。そう、精神疾患で悩んでいる人に寄り添うことはすごく難しいのだ。一つ一つの言葉、表情が患者に対しての大きな負担になってしまったりもする。松本穂香はその辺りを演技でうまく表現できる女優さんである。

そして、このロケ現場、川越スカラ座でしたね。昔の映画館の雰囲気を残す数少ない小屋(そういうのが相応しい)ですが。ある意味、現代にそぐわない空気感が人の心の齟齬みたいなものを表現するには良い場にも見えました。映画館の儚さに、その行く末を心配するしかないみたいなところです・・・。

だから、その後で松本もこの摂食障害の患者さんへの態度も少し変わるという流れはわかりやすかった。そして、彼女が学校の中に理解者ができることで、一つ自分で治そうという方向に目覚める感じも、ドラマの終わらせ方としては綺麗でした。だが、そこが始まりなわけで、現代社会の多方向からかかるストレスは、彼女を今後、どう刺激していくのか、見えない部分が多すぎますよね。

つまり、精神疾患からの回復は、自分の自助努力と、それを分かってくれる第三者が必要だということ。そして、そういう人は、今の日本の組織構造の中ではなかなか救い出せない状況になっているということもよくわかる。異次元の少子化対策とか言っているが、生まれてきて幸せになれない子が多いから、少子化になるという一面もある。本当に、このドラマ、首相にも見ていただきたいと思います。

今回、摂食障害の役をやった片岡凛さん。その、明るさを忘れかけたような表情をうまく演じられていました。でも、もっと明るい役で彼女を見てみたいと思う女優さんですね。

で、次週は、栗山千明さんの話になるようですが、この診療所の中で、静かに見守るような彼女の笑顔はとても暖かく感じます。その立ち位置のあり方の意味みたいなものもわかるのでしょうか?楽しみです。


この記事が参加している募集

#テレビドラマ感想文

21,725件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?