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「大豆田とわ子と三人の元夫(第3話)」器の小さい男は、結局使いやすいということ?

このドラマ、一回、一回は、とても面白い。それは否定しない。そして、おしゃれでないことをおしゃれに見せるような感じは大好きだ。でも、この恋愛ドラマの落とし所は、どこにあるのか、回が進むごとに謎めいてくる。そういうのは、最近の坂元裕二脚本のうまさなのかもしれない。

そして、松たか子という女優は、他の女優とは絶対的に違う味を持っているということを再確認したりする。基本、お嬢様な方なので、貧乏な役をやらせると、今ひとつフィットしないのは昔からだが、このドラマのように、「社長」という肩書きをつけてしまえば、しっくりくるし、その演技の速度感みたいなものは、絶対に他の女優ではいけないのだろう。このドラマの主人公の名前が「とわ子」なのは、松たか子の「たか子」からきているのだろうか?松たか子のイメージで作られた脚本だと思う。

そして、松田龍平が、角田晃広が、岡田将生が松たか子を愛したら、どうなるか?というような話なのだと思う。そのために、まず大豆田とわ子というキャラクターが秀逸である。色々な世の中にあるポンコツ感を一途に集めているような感じでも社長なのである。そして、人が嫌いなようで、人が好き。そう考えるだけで面倒臭いが、面白い。心の声のように流れる伊藤沙莉のナレーションがうまくシンクロしている。このナレーションがなかったらら、このドラマは結構普通の退屈なドラマかもしれない。

今回の主役は角田晃広であった。彼の器の小ささを見事に1時間弱の中で視聴者にわからせる感じが面白かった。だいたい、最初に、唐揚げを醤油の小皿で食べさせるみたいな表現で、人を表すのってすごいと思った。このシーンだけで、視聴者は、角田の印象を明確にしてしまう。

そして、大豆田との出会いが、ダンスだったとは意外だし、「だから恋に落ちたのね!」と納得させる感じが良い。二人でいるときに、昔の女にバカにされる角田をムキになってかばう、大豆田とわ子が可愛かった。

そして、二人のダンスシーンは、過去への心のタイムスリップを表現しているのだろうが、なかなか美しい。そう、二人の間にあった、誰にもわからない濃い時間が蘇ってくる感じがいい。

そんな綺麗なシーンを見せられた後に瀧内公美に、脅迫まがいに身代わりを頼まれる角田のシーンで、このドラマを危うい部分に戻していく。結局、男女関係が得意でない角田は、馬と結婚すればいいと言っているような脚本である。

そして、松田龍平と石橋静河の関係が、徐々に曝け出されていく最後。こういう次々に視聴者を別のドラマに向けていく感じ。坂本脚本の、ベテランらしい職人芸がみられる。

とにかくも、最初に書いたように落とし所が見えないのが、面白さでもあり、一回一回、人間の刹那さを感じるドラマである。そして、見終わった後に一人お酒を飲みたくなる感じも好きだ。

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