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「ミステリと言う勿れ」会話劇をいかに演出でアクティブに仕上げるか?初回はなかなか見事な流れ

意外にも、月9に菅田将暉は初登板だそうだ。モジャモジャ頭という漫画原作らしい風貌の役。その菅田が殺人犯として捕まるところから始まる事件ものである。初回は1時間半だが、その1時間は、事件に巻き込まれた菅田が取り調べを受けて、彼の自己紹介をしている感じ。そういう意味では、取調室のシーンが半分くらいで、なかなか閉鎖的空間ドラマなのか、と思ったら、真犯人は、取り調べしていた遠藤憲一だったというオチ。ここまでの流れで、刑事たちのキャラクターも全て見せていく脚本はなかなか小気味良い。脚本、相沢友子、さすがと言っていいだろう。

人が他人を観察するということを面白く描く作品なんだろう。警察が真実は何か?と追ったところで、「真実」は個々に違うという菅田。そういう切り口。つまり、言葉の本質を考えさせられる。これは、脚本家も、原作を読んで納得しながら仕上げる必要がある。それだけに組み立てがいもあるだろう。そして、あるのは「事実」だけだという菅田の考えは正しい。そう、何が正しいかは個々で違うから、「真実」だと人が言うときには、個々のバイアスがかかっている。そのバイアス的なものを菅田が明確に語ることで人が動く。セリフをしっかり聴いていかないと置いていかれるドラマだ。そう言う意味では、ラジオドラマ向きの題材でもあるかもしれない。

菅田将暉は、この役作り、結構難しかっただろうとは思うが、なかなか落ち着いた雰囲気を巧妙に演じている。そして、その菅田に心を読まれるものたちが彼にシンパシーを感じていくと言うことなのだろう。新しい事件で自宅に再度やってくる尾上松也と伊藤沙莉がなかなかキャラとして面白い。伊藤を刑事にするという試みも興味深かった。そう、初回でそんなキャラを明確にしていることで、ここからのドラマが面白くなるのだろうと思ったら、その事件が始まる。

「バスジャック」という環境の中に菅田を閉じ込めて、また会話劇が始まるのだろう。会話にならない犯人と会話をするということなのだろう。そして、バスに乗るところでぶつかった金髪男は永山瑛太だったのを私はよくわからなかった。(見た後にSNSで知った)こういう出方で印象付けたわけだが、結構、重要なキャラらしい。菅田に瑛太、なんか起こるのだろうねという雰囲気が良い

クラシックをうまく使った音楽もなかなか空気感をうまく演出している。結構、動きがないシーンが多いのでカット割にも気を使っている。職人気質を感じる演出が心地よい。最近のフジのドラマは、どうも今ひとつこういう硬質なものを感じなかったから、楽しみである。

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