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「シェフは名探偵(第9話)」味でつながる父と息子の絆。パ・マルという言葉の奥深さ

先週は、シェフの座っていた椅子が壊れて終わった。その椅子は、西島が父親の料理を見ていた思い出の椅子。壊れた椅子を濱田岳が気を利かせて捨ててしまい、新しい椅子を買う。ここで、西島がそれほど残念そうになく受け入れる芝居をする。それは、過去に縛り付けられていることから自分を解放しようとする芝居だろう。だが、ドラマ的には、その椅子は、スタッフの努力によって最後には戻ってきて、そこに座って西島は父親の料理を眺めることになる。このシーンはとても微笑ましかった。

ついに最終回。最終回には、シェフも読めなかった謎があったということがわかる。父が残していた大きな秘密ということなのだろう。そう、この最後の父と息子の再会、そして会話から一緒に料理する流れがとても心地よいラストだった。父親役の吉澤健は実に味のある親父という感じの芝居。そう、そこには、日本の親父の姿が投影されているようだった。昨今は、皆、歳をとっても若い感じの役者さんが多く、こういう味のある親父を演じられる人が少なくなってきた。西島とのコントラストもとてもよかった。

このシーンに至る、この父親を連れてきた奥貫薫のエピソードもまた、お父さんに関する昔話。これも、シェフのお父さんとの話の前菜にはいいお話。奥貫さんも、よく顔を出すが、それなりの存在感で画面を彩れる素敵な役者さんだと私は思っている。いい役者さんにいい料理という組み合わせもまたこのドラマの妙であった。

しかし、料理人を父親にもつと、それなりに料理の思い出の話はあるのだろうか?シェフに直にお話を聞くのも面白くはあるが、それを見ていたお子さんたちの料理の思い出みたいのを集めても面白いものができそうですね。

とにかくも、このドラマ、9話が無事終了。そして、ドラマの導入部で濱田岳の入店が決まり、ラストも濱田が勤めていたラーメン屋の近くのショップで探していた椅子が見つかるという流れ。色々と脚本はおしゃれにできていた。濱田は、結局バンショーのレシピを教えてもらえなかったのだろうか?

石井杏奈の俳句は邪魔ではなかったが、もう少しドラマのスパイスになるとよかったですね。壁に張り出すほどのものではないと思うのですが、これだけたまると、世界になっているのはすごいですが…。

西島を中心になかなかチームワークの良いレストランの風景を、チームワークの良い役者さん達でまとめられた、なかなかの秀作。まあ、テレビ東京のドラマは、お金を使えない分、内容で攻めようとするところが良いところです。そして、無駄なカットが少ないのも魅力。しかし、このレストランのある千駄ヶ谷。後ろに国立競技場が見える風景は、オリンピックに合わせたものだったのだろうか?そんな話はひとつも入らなかったけどね…。

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