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「恋はDeepに(第8話)」おかしな人魚伝説のドラマは、テレビドラマの現状の映し絵か?

ラスト2回は、石原さとみの正体がみんなにわかって?海に帰るまでという流れというのはわかるが、みんなが、このファンタジーを普通に受け止めるところで成立しているわけで、ドラマとしては面白みにかけるのは前から書いている通りだ。

渡邊圭祐が株を売り払い、兄たちの計画をおじゃんにさせたのに、結果、その土地がカジノに化けるという状況に陥るというのは、よくあるドラマ構成だが、それで、兄弟の仲が戻るような状況も少し安易である。

この兄弟の仲の悪さみたいなものも、このドラマの重要な構成要素だったのだと思うが、個々の本音みたいなものもよくわからないまま終わってしまいそうだ。役者さん人のコントラストとしては面白いのでとても残念。そして渡邊は、役者としてやはりかなりしっかりしているので、もっとちゃんとした役で使って欲しい。結局、物語全体として個々のキャラクターがちゃんと描けていなかったということに尽きる。

石原もそうだが、このカオスなだけで、本質のフォーカスが見えない脚本でとにかく役者たちが可哀想である。橋本じゅんと綾野剛という取り合わせも、「MIU404」と比べればわかることだが、もったいない限り。橋本さんの役は、昔話のお爺さん以外の何者でもなく、よくこの役を引き受けたなと思ったりする。

とにかくも、来週でラストである。そのために、石原の素性を研究者たちの前で開示することになるが、結局のとこと「石原は魚だ」とは言っていないし、そこに対する医者の見立ても明確にしてこない。嘘でもいいからSF的に処理してくれたらまだ救われた感じもする。

結局、身近な人は、よくわからないままに「あなたの味方です」という流れ。こういうなんかはっきりしないのは、今の時代ダメだと思います。だからこそ、納得しない学者が最後に絡むのは正当であり、おかしくはないのだが、それで、交通事故に持っていくとは、安易な脚本だ。

そして、この交通事故のために綾野が入院というのが、最終回のストーリーらしいが、結果的に、星が浜の海が守られるかどうかとは話が別である。つまり、環境問題というテーマと、石原に対する綾野の恋愛問題とがごっちゃになって、それぞれにちゃんと描かれないままに終わるのは決定的。視聴者が何を見たいのかもよくわからなくなっているというのが、このドラマであるのだ。

最後に石原の入水場面で終わるということなのかもしれないが、この変な人魚姫みたいな話を成立させてしまうのが今のテレビドラマの作り手たちのやりたいことなのだろうか?

映画がテレビに負けそうになった70年代初頭には、興行的にはダメでも、暴走気味の新しい映画が飛び出してきた。「仁義なき戦い」などはその代表作である。そう考えたら、今のテレビというのは、広告代理店と国とスポンサーに媚を売ることしかできないままに暴走もできなくなっているということを曝け出しているような感じがする。その呪縛から逃れられないなら、もはやテレビドラマの未来はないということなのかもしれない。もちろん、そんなテレビ局の金が蠢く映画界も同じように死にゆく流れだということであろう。


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