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「アンメット ある脳外科医の日記(第10話)」ドラマの中の当事者たちと一緒に涙でき、そして杉咲花を好きだと思える素敵な時間いただきました

多分、手術が終わった後も、まだ杉咲花の記憶は不安定なのだと思う。だからこそ、このドラマは記憶というものの不可思議さというか、それが生活の中で、人が生きる中で、結構、かけがいのないものなのだということを教えてくれた。今期の記憶喪失ドラマの中では、後味が最も良いドラマだし、記憶がなくなるという意味をすごく考えさせられた点では秀逸だった。

病院の会長で聞かれたくないことを聞かれってしまった酒向芳を先に警察に行かせてしまったことで、杉咲の記憶を蘇らせないという無駄な努力は必要なくなり、井浦新も、最後には彼女の手術を一緒にやるという流れになったのは良かった。というか、酒向の悪さの話や、それに伴う岡山天音の政略結婚的な話は必要だったのだろうか?まあ、サスペンスとしてこのドラマを考えれば必要だとは思うが、杉咲の記憶の話、脳の手術が難しい話などを描く意味ではあまり必要を感じない。連ドラとして、そういう無駄はよくあるが、そういうものは、やはりドラマ的欠陥にも見える。

前回、ラストで杉咲が倒れ、若葉竜也をはじめ、病院の全員が彼女を助けようと動く感じは素晴らしい最終回だった。そして、いつもはずる賢い役が多い安井順平が、全て自分が責任を取るというセリフを吐くのもなかなか感動的だった。これから、こっちの方向の役をやろうとしているのか?前に患者の会社に乗り込んだ時もだけど、彼の役、すごく格好いい役でしたよね。「Re:リベンジ」の病院の皆さんに見せてやりたいですよね。

それはともかく、若葉と杉咲の婚約に至るエピソードも色々開示され、二人が医者という立場で、そして、同じ意識的なものを持ってそういう関係になったことはよくわかった。最後の長いグミは杉咲が若葉に教えたものだという話は、なんかジンときましたね。あくまでも、若葉は杉咲を愛していて、彼の心の不器用さがまた彼を不安にさせたりしていたのだろうということもわかる。だが、最後に杉咲の手術を成功させたのは、愛の奇跡としか言いようがない。そこがこのドラマの美しいところだ。

で、主演の杉咲花。もう、十分の経験を積んだ女優さんだが、ここでは、すごく力の抜けた演技をしていたことが印象的だった。この役を他にこんな感じで演じられる女優さんがいるだろうか?と考えると、代役は浮かばない。そのくらい名演だった。そして、彼女のこういう自然な表情が彼女独自の芝居につながっている素晴らしさに感動もした。

とにかく、毎日記憶がなくなる人が周囲にいて、その人が人一倍真剣に仕事に向き合っていたら、誰でも、彼女のために何かできないかと思うだろう。それは、偽善に見えるかもしれないが、マイノリティの人間の頑張りは、周囲にも大きな力を与えるということだ。そういう意味で、障害者が社会的に健常者と一緒になって仕事をすることは大事なのだ。そう、人は皆違う能力の中で生きている。それが重なり合うことが愛であり、友情であり、力なのだ。

見終わった後にそんなことを考えさせられた、今期で、最も最初から見直したくなるドラマであった。


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