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「あの頃、文芸坐で」【21】「ルパン三世 カリオストロの城」で宮崎駿を意識する。

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前回の2週間後に、「火の鳥2772愛のコスモゾーン」と「ルパン三世 カリオストロの城」の二本立てを観に行っている。以前も書いたが、この当時はアニメが、子供向け映画という位置から、エンターテインメントとして成立して行った時期である。その、変わり目にあって、今に至るまで語り継がれているのが「カリオストロの城」なのだと思う。もう、41年まえの映画です。

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コラムは、ここでも「狂い咲きサンダーロード」に関して。一部の映画ファンの間では、この映画の公開は革命的だったのが感じられる。映画会社が作り続けてきた日本映画界が変わりつつあるのではないかという期待!その流れは、その後「ディレクターズ・カンパニー」の発足でピークを迎え散っていくのだ。そして、この映画はその頃の日本映画の勝手な熱を今も発している一本だ。内容より、あくまでも映像の熱がそこにある。コロナ禍の後、違う意味で、新しい熱を帯びた映画が見たい、今日この頃である。そして、ここで、ブルース・スプリングスティン特集に石井監督が出演した話が書いてあるが、奇しくも、今週末、スプリングスティンの曲をモチーフにした映画「カセットテープ・ダイアリーズ」が公開される。そう、その時代、音楽はカセットテープから流れていたのだ。

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プログラムの内容は前回と同じなので、控えめに!曽根中生監督の特集が組まれているが、もはや今の映画ファンにはあまり馴染みのない名前になったか?彼の最大のヒット作「鳴呼!!花の応援団」も昭和の漫画であり、存在も知らぬ人が多くなってきたし、それを受けて松竹で作られた「博多っ子純情」は、光石研のデビュー作なのだが、マドンナ役の松本ちえこも鬼籍に入ってしまい、遠い過去の作品に。晩年はあまりいい噂も立てずにこの世を去った監督である。でも、ロマンポルノには傑作も多く、ただ忘れ去られるには惜しい監督でもある。その記憶は、フェイドアウトしていくのみか…?

オールナイトでは、小沢昭一の5本立て。ラインナップは、当時の添え物ばかり。こういう五本立てが行われることはもう、絶対にないと思う。当時はまだ、小沢は永六輔、野坂昭如とともに中年御三家を名乗るにふさわしい存在だった。そう、中年だったのだ。死ぬ前(と言っても小沢氏の亡くなる32年前ではあるが…。)にこういう特集ができたことは役者冥利につきたのだろうなと思う次第であります。

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そして、「ルパン三世 カリオストロの城」である。制作は東京ムービー新社(現トムス・エンタテインメント)と東宝。まだ、スタジオ・ジブリを作る前で宮崎駿が世の中から巨匠呼ばわりされだした映画と言ってもいいだろう。そう、ずーっとアニメを作ってきていても、当時は子供漫画を作っているくらいにしか思われなかったのが事実である。そういう意味で、宮崎駿は映画業界というところを今もよく思っていないはず。私がヨコハマ映画祭の審査員をやらしていただいた当時、「となりのトトロ」が受賞したが、彼は出席しなかった。アニメ業界は映画業界の道具にされないという意思だったのか?映画ファンにしたら、「何言ってるんだ?」だったが、それ以来、私は宮崎駿という人の作品は穿った見方しかできなくなってしまった感じである。そういう意味で、「天空の城ラピュタ」までが私の宮崎映画であったりする。

話がずれたが、この時「カリオストロの城」は面白かった。だが、初期の原作のイメージを踏襲したアニメとは全く異質なものになっていたのは理解できた。あくまでも、宮崎的ルパンであるわけだ。でも、いまだにこの映画は多くの人に愛されている。それは素晴らしいことだと思う。

実際、私のこの日の本命は「火の鳥2772愛のコスモゾーン」の方だった。いわゆる、ロボットに恋する話である、「火の鳥 復活編」をモチーフにした話だったが、そのモチーフの方が断然面白かったという評価をした記憶がある。手塚治虫はこの時、52歳。まだまだ旬だったとは思うが、宮崎駿がその時39歳だから、やはり古臭い感じにはなっていたのかもしれない。

そう、ディズニーに憧れ、アニメに手を出し、経営難に陥った手塚だが、やはりその時代にあれだけの漫画作品を残し、作りたいだけのもの(作り足らなかったのだとは思うが…。)を作った天才は、私にしたら宮崎の数倍すごい人だと思う。だが、永続的に愛され続けるアニメを作ったのは宮崎の方であろう(もちろん、それは時代の技術的な差の問題もある)。

まあ、当時のアニメの位置的なものを思い出して、あれから40年、そのエンターテインメントの位置は変わったものの、私にとってアニメーションはいまだ、熱く語れる存在ではない。



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