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「ミステリと言う勿れ(第10話)」多重人格と友達と、人の成長と

この間見た「THE BATMAN」でも、最後に友達の話をしていた。人間のコミュニケーションにおける「友達」という言葉の意味は、個々人でかなりの差がある感じがする。バットマンは、その生い立ちの苦悩の中で、人を助けている。そして、彼は孤独の中で正義を見つめている感じである。そう考えると、ここにいる、菅田将暉、演じる整君も、バットマンと同じようなダークサイドの世界でもがいているということなのかもしれない。そんなことを考えながら、整君に同化している私がいたりする。そう考える人だけが、このドラマを面白く見られるのではないか?と思ったりもする。そう、「俺は友達がいっぱいいる」みたいな言葉を平気で吐く輩には理解できない世界がそこにあるのだ。

今回は、門脇麦、演じるライカさんの正体と、その存在が消えていく話。彼女が多重人格の中にいるという話は、なかなか難しいが、こういうことは実際にありうるのだろう。心の中に、「悪い僕と良い僕がいるような感じ」は多くの人が経験があるだろうが、それがそれぞれにキャラクターを密に作り、そして、会話しあうという中、その状況にちゃんと付き合う整君はやはり面白い存在だったりする。そして、彼自身も同じ身の上みたいな打ち明け話もあったが、彼自身が、いろんなものに気づくという根底には、世の中に対する怯えみたいなものがあるのだろう。

ラスト、桜を見て、花見をする感じが少しわかったというが、これ、結構大事なこと。つまり、桜は綺麗だ。それをみんなで騒いでみるのが正しいというのは、ある意味、世の中の押し付けである。だが、自分から、桜を愛でる気持ちがわかるようになるということは、自然との見えないシンクロなのである。整君は、変わった人たちに会いながらも、確実に人として、自分がどう生きるべきかを探っている感じが、私にはとても面白い。

そういう意味で、今回、「焼き肉」を門脇と初体験するシーンは、なかなか興味深かった。そこに、事件の暗号みたいなものが被さっていなくても、このシーンは焼き肉に対する新鮮なアプローチというものを感じられるわけで、このアプローチの末の初焼き肉はかなり美味しいだろうと思ったりもした。

しかし、今回に関しては、やはり門脇麦の演技が見どころ。こういう人格が変わるみたいな役は、彼女以外想定できない気もする。少し、世の中からずれた人物みたいのを演じさせたら、彼女は独特のオーラみたいなものを出してくる。昨年の映画「あの子は貴族」では、貴族の娘がその殻から出る様をうまく演じていたが、ここでは、多重人格から解放されるという難しい役を同じようになんなく演じていた。

ラスト、菅田将暉が声をかけずに門脇を見守るシーン、なかなか刹那い感じがよかったです。このドラマのシリーズの中では、今回の話が私は一番好きだし、何回でもリピートしたい回となりました。

次週はガロ君、再登場。楽しみです。

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