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「ブリット=マリーの幸せなひとりだち」万国共通?のおばさんの自立物語。ラストシーンが美しい。

特に観る気はなかったのだが、ちょっと内容を読んだら見たくなったスウェーデン映画。予想の枠内だったが、世界中に共感する女性はいるだろう。出てくる人はみんな良い人。サッカーを愛する人は良い人?という定義づけのような気もするが、まあ良いでしょう。後味が良い映画は良い映画である。

監督はツヴァ・ノヴォトニー。またもや女性監督である。女性の問題を女性が撮る。当たり前のようでなかなか今まではなかったこと。その視線はストレートでわかりやすい。子供たちの自由な描き方も好感がもてた。21世紀、未来は女性がどう作るのか?というところなのかも知れませんね。

夫に尽くして家庭を守ってきた主婦のブリット=マリー(ペルニラ・アウグスト)は、夫の心筋梗塞という危機にその浮気を知ってしまう。そして、彼の元から去ることを決め、田舎町のサッカーのコーチという、場違いな職業につくことに…。これ、職安の担当の人が自由すぎますね。日本のハローワークも見習うべきです。

そして、彼女が一つも知らないサッカーを子供たちに教えることに。子供たちは、有名な下手くそチームで、カップ戦で1点を入れることを目標に頑張っている。街の人も結構優しく彼女を見ていて、徐々に彼女もサッカーのコーチをやる気になるという話。

結局、家事しかしたことがない(だから、掃除や片付けにはうるさい)ブリット=マリーが、知らない世界を観ることで、自分の人生を見直す話である。日本を舞台にしてもできそうな、万国共通の主婦の物語。それを、スター・ウォーズにも出演している、ペルニラ・アウグストが好演。主婦だけをやってきて、あまり外の人に見られたことがないという感じを見事に出している。

そして、子供たちの自由さと闘う感じや、警察官に愛される顛末もなかなか可愛いし、素敵だ。そう、ブリット=マリーを通じて、様々なことを考える観客がいるということである。そこがこの映画が現地でヒットした要因だろう。

そして別れたはずの夫も彼女をつれ戻しに追いかけてくるが、一人だけ世界が違う感じで、彼女の心を元に戻す力は持っていない。ここの描き方もわかりやすい。

そして、メインイベントのサッカーの試合は、予想以上のボロボロだが、彼女の気合なのか、1点を取ることができる。このラストの喜び様は、勝った負けたよりも、「やった」という喜び。それは、ブリット=マリーが知らなかった世界で知らない喜びを知った瞬間である。

映画の作りはストレートで、とてもわかりやすい。そして、主役のペルニラ・アウグストの演技がこの映画を色付けている。世界的には、コロナ禍で主婦の独立の話が山のように起きているのかもしれない。そういう意味でも今の映画の感じがする。

結果的に、彼女は子供たちの夢をかなえるためにきた魔女的な役目だったのかもしれない。そして、その魔女は、子供の時にいけなかった場所に向かう。そのラストシーンがとても美しい。これを描きたくてこの映画はあるというラストシーンだった。




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