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「大豆田とわ子と三人の元夫(第2話)」日常の中の会話の洪水の果てに、すき焼きの肉を買い忘れるドラマ

観ている方が、会話の中身を聴き逃さないぞという感じで、じっくり観てしまうドラマである。そう、初回はそれが少しイライラにもなっていたが、2回目まで観ると癖になっている。坂元裕二の脚本の筆の走りが視聴者に伝搬してくるような感じ。それだけでも傑作なのかもしれない。

そんな、慌ただしいドラマの最後は、今日も三人の元夫と新しい女たちの対峙シーンで終わる。ある意味、大豆田とわ子に喋りたいだけ喋らせた後で、日常に戻るような感じでドラマを収束に向かわせ、ラストに、ヒロインにタイトルを言わせて終わるという結末がずっと続くということなのだろう。脚本家が1話1話に目標を設定して、セリフを絶え間なく描き続けるドラマなのだ。

2回を観終わって、このドラマの形式が、ネットでSNSのタイムラインを追っているのに近いのを感じた。昨今では当たり前になったネット画面が出てくるようなことはないドラマだが、ドラマの流れがネット社会でSNSを追っているそのものなのだ。情報が絶え間なく流れるが、そこに一貫性があるわけではない。そして、多くのことが抜け落ちている情報の中で、感情が先に立って、収束位置が不明のSNSみたいな世界だということである。キャストそれぞれの声がカオスに流れてくる感じですね。そう考えると、すごい今っぽい。坂元裕二はかなりチャレンジしているが、それが、そつなく流れているのはすごい。

そして、人物相関の設定と、キャラは明確だが、ほとんどが昔話で費やされ、まだ大きなドラマは起こっていない。そんな中で、今回は現在もビジネスパートナーの岡田将生との過去が少し解き明かされ、二人が結婚したということも、なんとなくわかるという話である。しかし、岡田の運動能力の低い走り方、うますぎる!

また、初回で出会った三人の男たちが松田龍平の店で愚痴を言い合う感じもこれからずっと続くのだろう。おしゃれな愚痴の言い合いはとても現代的だし、三人がかなり違う人間のように見えて、仲がいい感じで、その向こうに大豆田とわ子という人物が透けて見えてくる感じが楽しい。

とはいえ、かなり集中してみても、一回見ただけでは、全てが処理しきれない内容のドラマである。大きなドラマが展開しているわけではないのに、こちらが隙を見せると置いていかれる感じは、実際の他の視聴者たちはどう受け止めるのだろうか?

今回のすき焼き用の卵をもらって、元夫たちとすき焼きをする話も、肉を買ってこなかった夫たちの頭の中もズレているが、その話の末に、大豆田とわ子がパトカーに乗るに至るのは、すごい展開ですわな。しかし、何故に大豆田とわ子の家にはノコギリがあったのだろうか?

このドラマにおいて、視聴者はゴミ捨て場に捨てられた歌うぬいぐるみみたいなものなのかもしれない。そう、ドラマは過度なセリフとともに多くのことが起こっているわけではないのに、勝手にどんどん進んでいく。それを冷静に歌を歌いながらみていれば、最後には辻褄合ってくるみたいな…。(感想を書いているこっちも混乱を起こす感じがいいのだろう)

次週の主役は角田晃広な感じですね。瀧内公美にキスされ、「下手くそ」と言われるのってたまらないですよね…。

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