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「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~(第3話)」"何かが起こりそうだから"という新木優子の言葉がドラマの全てかもしれない・・。

ラスト、當間あみが練習していたバイオリンを持って演奏を始める芦田愛菜。さあ、彼女が音楽に対し向きあうことで、ドラマは確実にギアチェンジしてくるはず。ドラマの起承転結の"起"がここで見事に終わった感じがする。こういうわかりやすいドラマは、やはりパワーを持っている。

そして、プロとしての演奏として足りない部分を、入りたての佐藤緋美がすぐにというか、ここで指摘してくるのもドラマ的にはうまいところであり、そのイライラに新木優子が「なんでここにきたの?」と佐藤に問う。そして「私は、何かが起こりそうだから」という新木の答えを突きつけてその場を去る姿は格好いい。というか、いつも以上に力が抜けてる感じで新木とても良いですね。後で、彼女に関わる回もありそうだが、彼女がいいエッセンスになってるのは興味深い。

そして、その緋美に下手くそ呼ばわりされた宮沢氷魚の描き方もうまかった。その後に、西田敏行の店で、軽く客に対する演奏を行わせる。そのカジュアルな軽快な音楽感をうまく使って佐藤と仲直りさせようと、ベートーヴェン先生の「田園」の第二楽章を二人でセッションするような異質な展開を作る西島。こんなやり方はクラシックにあっては型破りだが、西島におけるシンフォニーとは教科書通りではないということも、ここでよくわかる。そう、西島の存在がドラマに「何かを起こしそう!」とも思わせるのだ。そこがこのドラマの肝であることは間違いない。

であるからして、この話のきっかけになった石田ゆり子の偽パリ行きも、この3回目でバレてしまったわけで、晴見交響楽団と西島の家族がどういう旋律を流せるように変化するか?というところが一気に動き出すのは次回からだろう。脚本的には、ほぼ問題はないと言っていい。

そして、一人で指揮者になりたいとルンルンしている當間あみの存在もここからどう使うのか、楽しみなところ。彼女が西島の息子の大西利空と知り合って、彼女が譜面がまだ読めていないことをダメ出しするようなところは面白かったし、彼女が楽器に苦戦してるところで、西島が来て、「私も高校生からこの道に入った」ということは、それが西島が、彼女を応援する理由であり、彼女も何かを起こしそうな役なのだろう。毎日の積み重ねが、山登りのように、いつか素晴らしい風景が見えるところに繋がってるという話は、人が何かを目指すすべてのものに通じる話であり、當間がそれが見えるところまで、ドラマが描けるなら、それも感動につながるだろう。

そして、その芦田がバイオリンを手に取ったということは、當間との接点は出てくるのだろう、この辺も興味深いですよね。

あと、そんな勢いがついていく人々を暖かく見守る感じの西田敏行が非常にいい味出してますよね。ドラマの位置的には、昔の森繁久弥的な位置なのでしょうが、特にでしゃばらずに、語ることは語り、歌を歌えば味がある感じがとても良い。まだまだ、お元気でこういう役を続けてほしい限り。

とにかくも、なかなか毎回、元気づけられる感じのドラマであり、毎回、良い感じで交響楽に触れられるのはとても心地よい時間になっております。

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