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「あなたがしてくれなくても(第11話)」ドラマで自己を破壊された4人が徒然に格好良く生きるために・・。

最終回の冒頭に野間口徹が出てきた時は、何?と思ったが、それ以外はなかなか綺麗な終わり方の脚本だった。

男と女が同志だと言うことは多々あると思う。だが、そこにSEXというものが介入しないことも珍しくないのが昨今の男女の関係なのかもしれない。だから、同性の恋愛も容認できる世の中になってると解釈もできる。そう考えれば、「現代の恋愛ってなんなのでしょう?」ということを問うたドラマとしては良くできていたと思ったりもします。

ラストクレジットで坂を登っていく、奈緒と永山瑛太。籍の入った夫婦としてそこに存在しているのかどうかはどうでもいいことなのだろう。二人の心は協調し合ってるようだし、そこにSEXが介入しなくてもワクワクはあるだろうということなのだ。

しかし、最終回で4人を同じフレームに入れてくるとは、ある意味、ドラマ的紋切型のラストだが、不倫ドラマとしては異質。でも妙な爽やかさが心地よかった。そう、この4人、ドラマの中では一度もまともにSEXができていないのだ。だから、普通の青春友情ドラマみたいにも見えてくる。ある意味、個々の内在する思いが整理され、最後にお互いの大切な人に向き合えるようになったとも言えるのかもしれない。

前に、このドラマについて「誰が加害者で、誰が被害者なのか?」ということを書いたが、結果的には、それぞれが加害者であり、被害者であったということだろう。これは、最近の私の意見だが、恋愛に限らず、人ってまずは自分軸の中で自分を愛せないと、他人を愛せることはできないと思うようになった。「なんで、そんなことするの?」という相手への不満は、それを許容する自分の自分への愛情が足りないからだ。そんな気持ちの源泉は自分を愛することができないことに起因するという理屈はかなり正解に近いと思っている。

このドラマ、皆が自分に対してイラついてるせいで、体裁が整った現実が崩れていく話だったのだ。それを、離婚という儀式をした後で皆が気づくという終幕。わかりやすいといえばわかりやすいが、最終回は、視聴者がいろんな部分を自分に重ね合わせて考えさせるように仕込んだ感じはする。それは、それでなかなかこちらの予想したものを超えていた。

今まで、4人のうちで最もイライラも多く、不幸な感じだった田中みな実が、最後には一番格好いい女に見えたのも面白かった。道で仕事中に出会った奈緒に「泥棒猫!」と声をかけて、奈緒と立ち飲み屋で話すシーンは秀逸。舞台をこういう立ち飲み屋にしたのは、全て心を曝け出すみたいな感じになるからだろう。そして、女子二人が少し棘がある感じから、同志的になってく会話の流れがなかなか素敵であった。そこで、SEXというものが、肌を合わせることで、いらないものまで見せてしまうというのは、多くの人が納得する話でもあるだろう。そういうエグ味のある世界が、現代の多くのワクワクがある世界にはあまり適応しないということを言っている気もした。田中みな実、このシーンで女優力も上がってることを示した感じにもなったですね。

少子化は元に戻ることはないと私は思う。それは、SEXすることが意味をなさない世界に私たちがいるからだ。とはいえ、AV産業などは盛んではないか?という人はいるかもしれないが、その産業さえ、もうこれ以上は広がることはないだろう。昔、ストリップで働くと、男でも女の裸は3日で飽きるという話があったが、それと同じで、昨今の男はAVで多くの女の裸をみすぎているのである。でも、痴漢や盗撮がなくならないのは意味がわからないけどね・・。

不倫からは話がずれたが、ここで描かれていて新しかったのは、「失楽園」で描かれていたような、身体を合わせることが不倫というわけではなくなっていたことだ。そう、あくまでも満たされない心を何で埋めるか?が問題だったのだ。田中が、他の三人に対して、そんな部分に鈍感だったのは、仕事の頂点を目指すためにそんな隙間がなかったからだ。だから、田中を主役に置いて、この話書き換えると、また違った面から現代のSEXとは何か?というところが描けるのかもしれない。

結果的には、いろんな面で単純な不倫ドラマでなかったので、面白かった。脚本の進め方も上手く、役者たちが誰も嫌われない形で終わってるのは、なかなかできる技ではない。

で、何か先進的なことを言っているように見えていて、周囲もしっかり観察してるなと思わせた、武田玲奈が、普通に結婚して妊娠して終わってるのは、どう考えれば良いのかな・・?

次週は、ドラマの隙間を埋める特別編?面白いものを見せていただきたいですね。

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