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「日本映画」は本当にダメなのか?【その3】

一応、今日が最後のつもりで書いている。要は、「どんな面白いものを撮るか?」ということだと思う。一昨年、低予算で撮られた上田慎一郎監督「カメラを止めるな」が異例の大ヒットをして世界中で公開されたことは記憶に新しい。彼自身も一生懸命にプロモートしている姿はなかなか気持ちよかった。

そう、面白い企画をして、それなりの才能と金を集めれば、結構まともに面白い映画が撮れる時代なのである。ということで、クラウドファンディングというものも映画製作に使われるようになった。

だが、「パラサイト」がカンヌ映画祭とアカデミー賞をW制覇できたのは、映画全体のクォリティーの高さが結構効いているという話を、あちこちで読む。この内容の作品に製作費30億円というのは破格である。それをきいてから、この映画の撮影が全てセットだと聴くと、そういうことかとも思う。映画全体のクォリティーをとにかく突き詰めるための金なのだ。そしてそれは、スタッフや俳優の人件費にも十分なものが注ぎ込まれているはず。

そして、韓国の国としての映画人材の組織的な育成の話を聞くと、日本の嘘つきを集めた政府ではとても無理だろうなと思うわけである。というか、とにかく日本の国には「文化」を創り育てるという意識がないのである。一昨年「万引き家族」がパルムドールを獲っても、日本の首相は知らんふりである。そうかと思うと、自分の見方にできそうな俳優は官邸に呼びつける。この人は本当に文化などどうでもいいのだ。まあ、漢字もまともに読めないのに「文化」とかわかんないよね。

少し脱線した。昨年、「宮本から君に」への助成金取り消し問題も同じで、映画自体を観ているとも思えない発言の中で、出演者に麻薬で捕まったピエール瀧がいただけで、「金はださん」という。彼らは映画に興味がないのである。

そうは言っても、この話の最初に書いたように映画産業は少し上向きである。ただ、日本の場合、アニメがそれを支えている面もある。数が多すぎるて需要と供給のバランスが悪くなっている気はするが…。アニメの末端で働く人も恵まれた生活が与えられているとは思えないし、ブラックな業務環境はなかなか変わらないだろう。

ビジネスとして成立させるのに、人件費は削るという発想は、もの造りにとっては、本当にモチベーションを落とす行為だと思う。映画が成立した後の興行収入の分配ももう一度見なすことも必要だと思う。日本の映画産業は、他の産業と同じく、昭和のやり方を引きずりながら、新時代に突入している。そういうことが、作品のテイストにも影響はしているのだろう。

だいたい、「アカデミー賞を韓国映画がとった=日本映画が韓国に抜かれた」みたいな発想がよくわからん。どこで競争しているのか?映画を本当に楽しんでいるのか?賞を獲ったということで、映画の品質を意見するのか?

映画っていうのは、あくまでも娯楽である。時に時代への訴えかけでもある。ただ、見る方にとっては「面白いか?つまらないか?」である。「パラサイトがつまらない。嫌いだ」という私の意見に対し「そう言ったって、多くの人が認めてるんだから…」という方がいたが、その人は「何が面白かったか?」は説明しなかった。日本人の賞アレルギーなんて、そんなものである。「日本映画ダメだ」と言っている人たちは「パラサイト」に出てくる便所こおろぎみたいなものだと思っている。

映画を作る方も、最高傑作は次回作であり、観る側にとっても、次に見る作品が生まれて最高の感動を与えてくれるかもしれないと思って観るのだ。その基本を忘れて、賞の結果に左右される必要もない。

とにかく、今の日本は景気が悪いせいもあるのか、新しい未来をしっかり見据え行動する力がないように思える。とにかくも「パラサイト」は今までは英語圏の映画以外考えられなかったアカデミー賞の道を世界全体に広げたということは意味があるし、それを目指す道もできたのだ。

いわゆる、野茂英雄が日本人メジャーリーガーの道を開いたように、これからはハリウッド以外の映画人が結構簡単に世界で勝負できる時代になってくる。そんな中、「日本映画はダメだ」というような輩は放っておけばいいし、映画産業というリングに上がるものは、心して質を極めていくべきなのだ。

黒澤明や円谷英二が、世界で評価されたのは、遠い昔ではない。そのDNAは今の日本人の創作力につながっているはずだし、お金のなさもなんのそので映画を創り続けてきた日本人を自分たちで卑下してどうするんだという話である。

とにかく、創意工夫、そしてお金をどう儲けるかというビジネス的な視点も映画製作には重要な要素である。もの造りの人は、私も含めてここに眼がいかない人が多い。労働環境にしても、気合でのり越える時代は終わっている。映画自体の質の向上は、その映画を作る環境にも由来する。とにかく、みんなで作る人も観る人も潤う映画を撮ることを考えよう。強く訴えたいことがあるなら、どうすればそれが伝わるか考えよう。思考せずに、今までそうだったからというのも無しである。そんな環境が整えば「日本映画はきっと面白くなるはずだ!」

さあ、みんなで映画を作ることを考えよう!


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