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長距離ランナーは何故筋トレをする?

こんにちは、池上です!


 突然ですが、あなたは中学、高校、大学、(実業団含む)プロの強豪チームのすべてが筋トレをしているという事実をご存知でしょうか?例外もあるかもしれないので、一応全てといっても過言ではないくらいの言い方にしておきましょう。


 いずれにしても、ほぼ全てのチームが導入するからにはそこに何かあるに違いないと思いませんか?


 きっとこれをお読みの読者の中にもランニングに必要な筋肉は走っていればつくはずだ。筋トレなんて必要ないのではないだろうか?と思っている方も多いと思います。実際私もかつてはそんな疑問を持っていました。


 しかし、今から思えば少し考えすぎでした。なぜなら、下記のような簡単な質問を繰り返せば、答えは見えてくるからです。というわけで、下記の質問にはいかいいえで答えてください。


1. 長距離ランナーも短距離が速ければ速いほど良い

2. 長距離ランナーも野球やサッカーなどの球技がうまいほうが良い

3. 長距離ランナーも武道の心得があったほうが良い

4. 長距離ランナーも走り幅跳びと三段跳びの能力が高いほうが良い

5. 長距離ランナーも壊れにくい強い体を持っていたほうが良い

6. 長距離ランナーも一日中動き続けられる持久力があったほうが良い

7. 長距離ランナーも腹筋や背筋、腕立て伏せなどの基礎体力があったほうが良い


 どうでしょうか?答えは出ましたか?答えはすべてはいです。短距離が速ければ速いほうが良いというのは、いうまでもないでしょう。球技や武道の心得があるというのは、運動神経が良いということであり、相手の心理を読むことが出来るということであり、様々な情報を瞬時に判断し、適切な行動を起こすという判断能力と運動神経の総合が優れているということです。


 走り幅跳びや跳躍力に優れているということは、基本的なバネが優れているということであり、長距離走は一日中動き続けるスポーツではないですが、それができたほうがつかれずに練習できる可能性が高く、壊れにくい強い体を持っているということはそれだけやりたい練習が出来るというわけです。


 ただし、これはあくまでもできないよりは出来たほうが良いということです。これとは別に限られた体力や時間、集中力をそれに使うべきかどうかという判断が必要になります。例えば、野球やゴルフのようなスポーツは普通は体の片側を多く使うので、どうしても体が偏ってしまいます。また野球選手のような大きな体では長距離走には不利です。これはウェイトトレーニングについても同様のことが言えます。筋肥大すると長距離ランナーには不利です。程度問題ではありますが、意識的に大きくした筋肉は邪魔だといってよいでしょう。


 このようにマイナスになるケースだけではなく、例えばスプリンターのように100mが速ければ、さぞラストスパートでは負け知らずだろうとは思うのですが、人間の体は受け入れられる負荷の総量が決まっています。その負荷の総量は人によって違いますし、トレーニングやリカバリー戦略、心の使い方によってその負荷の総量を増やすことはできますが、誰にでも限界はあります。その限界がある中で、マラソンランナーがスプリンターと同じくらいスプリント練習に時間を割くことはナンセンスです。


しかし、やらないよりやったほうが良いことは確実なのです。


 ここで収穫逓減の法則を思い出してください。私のブログ読者の方は皆さんご存じだと思いますが、念のため復習から入りましょう。収穫逓減の法則というのは、練習の負荷をあげれば、あげるほど練習効果は増すが、単位負荷当たりの練習効果は逓減(徐々に減る)という法則です。もう少しわかりやすく説明しましょう。


 ここではわかりやすいように練習量だけに焦点を絞ります。基本的には総走行距離とその人の走力は比例します。やっぱり週に20㎞しか走らない人よりも50㎞、50㎞の人よりも100㎞、100㎞の人よりも200㎞の人の方が速いです。ですが、週に200㎞走っている人よりも週に250㎞の人の方が速いかというと結構疑問です。週に200㎞の人よりも週に300㎞の人の方が速いかというとこれもあまり関係がありません。


 ただ、週に20㎞と50㎞、50㎞と100㎞の間には大きな差があります。これが収穫逓減の法則です。そして、収穫逓減の法則にしたがえば、最も差が大きくなるのは全くやっていない人と少しでもやっている人です。これは皆さん経験的にご存知でしょう。週に20㎞しか走っていない人と全く走っていない人では走力が全く違います。


 同様に週末だけでもサッカーをやっている人と私のように体育の授業でしかサッカーをやったことがない人の間では圧倒的な差があります。私の身近なところでは私の妻の事例で、この収穫逓減の法則を見ました。私の妻は3000mSCで日本選手権2位に入ったこともある元競技者ですが、引退後は全く走っておらず、今では日本選手権で入賞できる可能性がある種目は朝起きれない選手権だけになってしまいました。


 そんな状態なので、11月に会社の同僚と遊びで走った5キロでは24分59秒でした。全く走っていない割には速いので、昔取った杵柄というのは少しはあるんだなと思いましたが、読者諸兄の皆さまの方がはるかに速いでしょう。その後はほんのたまにではありますが、7キロくらいの距離を一キロ6分くらいのペースで走っていました。本当に気が向いたときに走るだけで平均週2回以下だと思います。


 ところが、それでもハイテクハーフマラソンの10キロの部では倍の10キロという距離を48分59秒という5キロのレースペースよりも速いペースで走り切ってしまいました。これが収穫逓減の法則の実際です。一方で私の場合は、すっかり市民ランナーになってしまったとは言え、それなりの走力は維持しているので、現状に週2回1キロ6分ペースの7キロジョギングを付け加えたところで、練習効果はゼロに等しいでしょう。これが練習の負荷が上がれば上がるほど、単位負荷当たりの練習効果は逓減するということです。


 余談ですが、人間は精神面でもこの収穫逓減の法則が働きます。経済学の用語で限界効用と言います。ビールが好きな人は仕事終わりの一杯、もしくは走り終わった後の一杯が楽しみだという方も多いと思います。やっとの思いで、仕事を終えて家に帰り、冷蔵庫を開けて缶ビールに手をかける、至福の瞬間です。もう一度その至福の瞬間を味わいたくて、2杯目、3杯目、4杯目と飲んでいくうちに一杯目の感動は薄れていきます。そして、5杯目、6杯目となってくると気持ちが悪くなってきてもはや満足感=効用が得られなくなります。これが限界効用説です。


 人間は基本的にこの限界効用のおかげで、ウェルビーイングを実現できます。おなかが減ってる時のご飯はおいしいですが、徐々においしくなくなり、満腹になるともう欲しくなくなります。疲れ果てた時の睡眠は気持ち良いですが、一日中寝てると暇になります。動き回るほうも同じです。走りに行くのも、友達と遊ぶのも楽しいですが、疲れてくると眠たくなります。お酒もコーヒーもはじめの一杯はおいしいけれど、度を過ぎると気持ち悪くなります。セックスも初めは気持ち良いけれど、時が来ればそれ以上気持ちよくなくなり、眠気に襲われます。


 ちなみに太っている人というのは、食べる量が多い人よりも、運動不足の人よりも、食生活が乱れている人が多いです。食べるもの、飲むものは人間の神経系統に影響を及ぼします。それゆえ、食生活が乱れている人は神経系統が正常に働かず、限界効用が正常に訪れないのです。これ以上は話がそれるので、この話はまたいつか。


 閑話休題。そんなわけで、長距離走・マラソンが速くなるにしても、運動神経は良いほうが良いし、筋力は高いほうが良いし、短距離は速いほうが良いけれど、それらは決してメインの練習ではありません。しかし、ちょっとでもやっている人と全くやっていない人との差は大きいのです。ですので、いろいろな動きづくり、バウンディング、坂ダッシュなどを紹介してきたのです。


 その中でも重要なものを絞るなら、下半身は坂ダッシュ、上半身は腹筋、背筋、お尻周りの筋肉が重要です。坂ダッシュはなんとなくわかっていただけるでしょう。気持ち程度スプリントトレーニングを入れるということと登り坂を走れば自分の体重を利用した筋トレになるからです。しかも、ジムでのウェイトトレーニングよりもランニングに特化した筋肉が鍛えられるので、故障の予防になります。


 そして、腹筋、背筋、お尻周りの筋肉を鍛えることも故障の予防になります。


 何故かというと、上半身と下半身の筋肉を連動させ、軸を安定させるのが腹筋、背筋、お尻周りの筋肉だからです。軸を安定させるというのは固めるイメージではありません。軸を一本固定して、その軸を中心に自由に動き回るイメージです。振り回すくらい振り回してもらっても構いません。ただし、その時軸が安定していないと前方への推進力につながらないばかりか故障の原因になります。


 あとは頭です。頭は人間の体の中で最も重いパーツで、しかも地面から一番遠いところになるので、頭がぶれるとエネルギーのロスになります。そして、頭を真っすぐ立てるには腹筋や背筋が必要です。


 また、腹筋や背筋、臀筋の強さというだけではなくて、運動神経の問題もあります。人間の体というのは使えば使うほど、その運動神経が発達します。ですから、日本人は箸を使うのがうまいですが、欧米人は下手です。それは単純に使っている量の問題です。


 しかし、ランニングのような複雑な?動きになると、なかなか個々の筋肉の使い方を学習することが出来ません。そのため、動きづくりなどをするのですが、実は筋トレもそういった個々の筋肉の使い方を覚えることで、神経回路を構築しているのです。だから、筋トレの中でもランにつながりやすいものとつながりにくいものがあるはずです。


 あとは筋トレにはホルモンを分泌させる効果があるのですが、これは少し負荷を強めないといけません。持久系の種目というのは、いろいろなメリットも多いのですが、成長ホルモンや男性ホルモンの分泌を促すには少し負荷が低く、逆に競技者がやるような過度なトレーニングはホルモン系にダメージを与え、ホルモンが正常に分泌されないこともあります。


 成長ホルモンと書くと我々成人には関係ないように思われるかもしれませんが、成人にとっての成長ホルモンとはアンチエイジングの神様みたいなものです。どんなサプリメントももともと体内に備わっている成長ホルモンには勝てません。だから、成長ホルモンの分泌量いかんで老ける速度が決まるのです。


 また、女性にとっても男性ホルモンは重要な働きをしており、走力の向上や筋力の向上(ということは脂肪を燃焼し、引き締まった体を作る)のにも重要で、仕事などのやる気の源にもなります。筋トレをすると、男みたいな体になるかもしれないという不安をお持ちの女性にはあるボディビルダーの言葉を紹介しましょう。


「筋トレしたらマッチョになると思ってる女いるやん?俺らどんだけ努力してると思ってんねん!!」


 女性アスリートがどれだけ努力しても男性アスリートには勝てないように、筋トレしたからと言って、ムキムキになることはありませんので、ご安心ください。


 で、ここで収穫逓減の法則の話に戻りますが、これらのような練習は決してメインの練習にはなりえないのですが、週に1-3回やるだけでも全くやっていない人と比べると大きな差になるのです。それは継続すれば、大きな差になるという話ではなく、収穫逓減の法則によるものです。一番差が大きいのは全くやっていない人と少しでもやっている人なのです。


 最後に、競技者の間では、筋トレではなく補強と呼ばれています。その理由はここまで読んでいただいた方ならお分かりいただけると思います。メインではなく補強なのです。


それでは一緒に補強をやっていきましょう!

ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志


追伸

 昨日「ブレない走りと綺麗な体を手に入れよう!ランナーのための体幹補強」第二版をリリースしました。第一版の際は、100部しか作らなかったのですが、予想に反して一瞬で売り切れてしまいました。第二版は200部作ったので、すぐにはなくならないと思いますが、それは神のみぞ知るところであります。まだ詳細を確認されていない方は今すぐこちらをクリックして、ご確認ください。

 週二回二十分、二か月間継続的に取り組んでも腹筋が割れなければ全額返金いたします。


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