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今週のライオンズ

 日本列島は寒波に覆われ各地では非常に寒い日が続いている今日この頃ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?日本列島では寒波以外にもコロナウイルスのオミクロン株が猛威を振るい、各種ロードレースが軒並み中止になっています。コロナが流行以後はレース難民という言葉も生まれましたが、そうなると我々が動くしかありません。


 まだ計画の段階ですが、2月12日土曜日に大阪の長居周回コースで15キロのロードレースを開催いたします。あまり参加人数が増えても問題なので、メルマガ読者様限定で後日告知致します。楽しみにお待ちください。


 さて、そんな世界情勢が不安定な中でも、我らがウェルビーイングライオンズの選手たちはケニアで開催されるか分からない春のマラソンに向けて練習を続けています。今回は本題に入る前に何故ケニアは長距離走、マラソンが強いのかという理由をお話ししたいと思います。


 もちろん、その理由は決して一つに特定できません。いろいろな要素の積み重ねでケニアは世界の中長距離、ロードレース、マラソンを牛耳っているのです。しかし、どれか一つに絞るなら私は以下の要因を挙げたいと思います。最近M1グランプリで優勝した錦鯉さんと同じ理由です。


 私もいろいろな貧乏生活は経験しましたが、錦鯉のお二人は日本人離れした貧乏経験をお持ちで、ボケ担当長谷川さんの方は電気代が払えず、夜のバイトの前に信号から漏れてくる灯りでひげをそったそうです。ちなみに、赤信号の時は暗くて手元が見えないのでひげもそれず、青信号の方が明るくひげをそれるので、家の中で信号守ってひげをそっていたそうです。


 そんな長谷川さんは相方の渡辺さんとともに前回のM1で優勝されました。長谷川さん50歳、渡辺さん43歳という普通ならありえない年齢での優勝です。なぜ、そこまでお笑いを続けられたかというと、お二人とも年齢を重ね、今更就職できるわけでもなく、「やめてもやめなくても何も変わらないから」続けていたそうです。そして、最後に大倫の花を咲かされました。


 実はケニア人ランナーも全く同じです。どれだけ結果が出なくても、走っていようが走っていまいが、他に可能性などないんです。だから、20歳後半や30歳になってからも活躍する選手が多いのです。箱根駅伝で花を咲かせ、実業団に入っても3年を目途に退部勧告される選手が多い日本とは対照的です。


 私自身もそれを自分自身の目で嫌というほど見てきたのですが、話としてはこちらの方がまとまっているので、ランナーズユニバーシティの会員松岡継文様より寄贈していただいた『スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?』より引用させて頂きます。

「砂糖。砂糖が欲しい」。その声に私が戸惑ったように見えたのだろう。「ねぇ、砂糖     だよ。お願いだ」


 ケニアのイテンにあるカマリニ・スタジアム。その上に、私はあるランナーと立ってい
た。ただし、そこをスタジアムと呼ぶのは、空き地を大聖堂と呼ぶようなものだ。スタジアムの片側に配置された木製の観客席は空色のペンキで塗られ、並びの悪い歯のように少しうねっている。観客席の向かい側は切り立った崖で、リフトヴァレーの谷底から1200m、海面からは2400mの高さがある。数十人のランナーがトラックを周回してインターバルトレーニングを行う中、羊が一匹、急斜面から迷い込み、インフィールドで草を食んでいた。


 私と話していたランナー、二十四歳のエヴァンス・キプラガトは、砂糖を買ってくれとせがんでいた。その木曜日の朝、キプラガトはスタジアムまで10㎞の道のりを走ってやって来て、それから厳しいトレーニングを行っていた。あと数分もしたら、10㎞の道のりを再び走って帰る。もし私が食料をかってやらなければ、空腹のまま、地元の男が使わせてくれている小屋に戻ることになる。シャンバという、最低限の自給自足のための小さな畑の一角に建てられたものだ。


 キプラガトの両親は耕していたシャンバを所有していなかったため、2001年に両親が病死すると、キプラガトはその土地を去らなければならなくなった。今の部屋はありがたいが、「食べ物には不自由している」と言う。キプラガトは、火曜日と木曜日にはたいていスタジアムまで走って通い、トレーニングに励む一団に混じる。その中には、ボストンマラソンとニューヨークシティマラソンの覇者、ジョフリー・ムタイや、3000m障害祖王の世界記録保持者、サイフ・サイード・シャヒーン(元の名前はスティーブン・チェロノ)もいる。ケニア育ちのシャヒーンは、今もケニアでトレーニングをしているが、金銭的な理由で国籍をカタールに移していた。キプラガトは、トレーニングが終わった後もさらに数キロ、歩き回る。友人の家を訪ねて回り、トウモロコシ粉と水を練って作るこの地方の主食、ウガリの残り物のおすそ分けを狙うのだ。食べ物を十分に集めることが出来たら、この日二度目の10㎞を暗い中、走り出す。彼は、毎週火曜日と木曜日にスタジアムへの往復で20㎞走るのとは別に、毎日、少なくとも二、三回は走るようにしている。


 これは、走ることにすべてをかけている人間の生活だ。トップランナーと競い、表彰台の最上段で国歌を聞いて涙を流すことに情熱を傾ける人間の生活だ。ただし、キプラガトはそういった人間ではない。


「もし軍隊で仕事を見つけることができたら、トレーニングをやめるの?」と尋ねてみた。答えは「ああ」「警官なら?」「ああ、やめる。どんな仕事でも、あればいい」


 キプラガトは、トレーニングを続けられる仕事を望んではいるが、まともな暮らしができる仕事の誘いがあれば、明日にでもトレーニングをやめても良いと考える。トレーニングを始めるようになったきっかけは、2007年に小さなレースで高校の友人を打ち負かしたことだ。昨年は、ケニアの起伏の多いコースで10㎞のロードレースを29分30秒で走った。これは世界レベルの選手の大半と比べても立派な記録だが、カマリニ・スタジアムで走っているランナーの一群から頭一つ抜けるほどのタイムではない。そのためキプラガトは、ケニアの大都市で開催されるレースに参加するための旅費を借りる努力を続け、そこで活躍してスポーツ代理人の目を引こうとするだろう。

    

 カマリニ・スタジアムには、キプラガトのようなランナーがいくらでもいる。私がスタジアムを訪れた日には、およそ100人のランナーが世界チャンピオンと並んでトレーニングをしていた。時に見慣れないランナーがトラックに現れ、オリンピック選手と同じペースと走ろうとすることもある。もしそのペースを保てたら、そのランナーはここに残ることが出来る。保てなければ、シャンバにこそこそ戻るしかない。ここで見る光景は、ケニアのトレーニング事情の縮図と言ってよい。トレーニングの秘訣などほとんどない。なかには、コーチについていないトップランナーさえいる。そして、プロのアスリートのように、進んで一日に何度もトレーニングをするランナーが大勢いる。アメリカでは、大学生のトップランナーが夢を追いもとめるために何年か就職を延ばさなければならないことがある、しかし、「ケニアでは正反対です」と、かつての国際的なランナーで、今はケニアでコーチをしているイブラヒム・キヌシアは言う。ケニアの田舎には先延ばしにする仕事も大学院もない。だから、エリートランナーと一緒にトレーニングに励んだところで失うものも何もない。世界銀行の統計によれば、ケニア人の平均年収は800ドルだ。したがって、ランナーとして成功した場合の見返りは、アメリカの都会に住む少年がNBAの契約を獲得して得るものよりも相対的に大きい。(デイヴィッド・エプスタイン著『スポーツ遺伝子は勝者を決めるのか?』川又政治訳

 ライオンズの選手たちにも同じような境遇の選手は少なくありません。少なくとも考え

方に関する部分に関しては、完全に同じと言えるでしょう。私がライオンズの選手たちと契約したのは、彼らが純粋にビジネスとしてマラソンに取り組んでいるからです。私には彼らの気持ちがよく分かります。少しでも良い結果を残して、お金を稼いで家族に良い生活をさせたいから努力するんです。


 そこには主体性があります。やらないと怒られるからやるのではありません。やらないと罰を受けるからやるのでもありません。人に言われて嫌々やるのでもありません。自分が結果を出したいからこそ、自ら進んで取り組みます。当然、節制もするでしょう。だから地球の反対側にいたとしても、私がいちいち選手を管理する必要などありません。必要なのは明確で理にかなったビジョンと結果を出すために必要な環境です。


 その環境を整えるための軍資金は皆様お一人お一人から頂いている受講費、書籍代、DVDの費用から捻出させて頂いております。重ねて厚く御礼申し上げます。


 さて、そんなライオンズの選手たちの練習は、先週はかなり特異的な練習が入っていたこともあって、今週はかなり一般性が高くなったなという印象です。


1月17日月曜日

AM: ヒルワーク1時間

PM: 10K 低強度


1月18日火曜日

AM: 20K 低強度

PM: 10K 低強度


1月19日水曜日

AM: トラックでのスピードワーク

4x1600 @69秒 休息2分

4x1200 @ 67秒 休息2分

1x800 @ 64秒

PM: 10K 低強度


1月20日木曜日

AM: 20K 低強度

PM: 休養


1月21日金曜日

AM: ファルトレク3'/1‘ x 17 於モイベン

PM: 10K 低強度


1月22日土曜日

AM: 16K 低強度

PM: 休養


1月23日日曜日

AM: 休養

PM: 休養


 月曜日のヒルワークが復活するとともに、水曜日のスピードワークではかなり質が上がりました。確かに選手たちの実力を考えれば、それほど速くないのかもしれませんが、それでも標高2000mを超えると現地で生まれ育った選手でも1キロ3秒は遅くなります。そうすると、内在的な負荷は1600mが1000m2分50秒ペース、1200mは1000m2分45秒ペースとなるので、マラソントレーニングとしてはかなり負荷が高いと言えるでしょう。


 そして、土曜日はロングランがない代わりに金曜日はファルトレクがモイベンで行われました。モイベンは私と私のコーチディーター・ホーゲンが出会った思い出の場所でもあります。ありがたいことに、最近急速に拙著や拙ブログの読者様が増えたので、このあたりの行きさつをご存知ない方もいらっしゃると思います。またコーチホーゲンについてはおいおい書かせて頂きます。


 さて、モイベンというのは片道20キロくらい続く比較的平坦な道です。ライオンズの選手たちがトレーニングに励むイテンという町は非常に起伏の多い町で、どこにいっても平坦なコースはとれません。そこで距離走やこういったインターバル系の練習を行うときは、車で30分くらい走らせたモイベンというコースにいくのです。


 ここでのファルトレクは3分速く走って1分ゆっくりを17セットです。これは私が今週のライオンズで再三書いていることですが、インターバルトレーニングやファルトレクだからと言って、必ずしもスピードの養成を目的とするものではありません。3分速く走って、1分リカバリーというその疾走時間と休息の比率もそうですし、3分の疾走を17セット繰り返すと51分にもなるというその合計の疾走時間に関してもそうです。


 しかし、こういったある程度長い距離をある程度速いペースで、リラックスして走ることでスピード持久力が向上します。市民ランナーの方とお話しさせて頂いてよくある誤解は1000m5本よりも10本の方がきついとか、インターバルは一本一本思いっきり追い込まなければいけないというものです。必ずしも、インターバルトレーニングは一本一本思いっきり追い込むものではありませんし、またペースを落とせば5本やるのも10本やるのも負荷としては同じということもあります。


 そして、次自分が出場するレースの距離によっては、ペースを落として本数を増やすことが大切なこともあります。その中でも、ファルトレクはタイムを測らずに時間を基準に走りますし、車が来なければコースも自由に取ることが出来るので、楽しく追い込める練習の一つだと思います。是非、取り入れてみてください。


 ちなみに私は、河川敷の野球場で一時期おおよそハーフマラソンのレース強度で10分速く走って、2分休息というファルトレクにはまっていた時期がありました。景色も良く、下も柔らかく、ところどころ段差もあって楽しんで行うことが出来ました。


それでは素敵な日曜日になりますように

ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志


追伸

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