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慢性的な故障のメカニズム


 慢性的な故障の原因は何度もブログ内で書いてきたように低度で慢性的な炎症とフリーラディカルです。但し、こういわれてもあまりピンとこない人が多いうえにどうしても栄養からのアプローチのみになってしまいます。今回は少し違う切り口から書いてみたいと思います。

慢性的な故障のメカニズム

 慢性的な故障の始まりは筋肉にこわばりが出来てかたまりが出来ることです。筋肉を触っているとしこりが感じられることは競技者であれば誰しもあると思います。最近はトリガーポイントという言葉も使われ始めています。

 このしこりが出来ると血行不良が生じ局所貧血が起こります。この局所貧血が起きると酸素をはじめとしたさまざまな栄養がその箇所に行き渡らなくなります。局所貧血による酸素欠乏で先ず低度で慢性的な炎症が生じます。詳論は割愛しますが、細胞の生存戦略として酸欠状態になると正常な細胞死であるアポトーシスではなく、炎症を伴うネクローシスが起きます。

 このような状態が6―8週間続くと組織の再生が正常に行われず、やがて組織の癒着が起こります。全ての筋肉は互いにつながっているのですが、この筋肉と筋肉、若しくは筋肉と腱などをつなぐ結合組織のことを筋膜と呼びますがこの筋膜内に癒着が生じます。筋肉の周囲にも傷ついた組織によって構成された癒着が形成され、更に故障個所を悪化させていきます。

 またこの組織の癒着が筋紡錘やゴルジ体が脳に送るシグナルに悪影響を及ぼします。筋紡錘やゴルジ体は3次元空間における筋肉の位置などをコントロールしているのですが、ここから誤ったシグナルが送られることで筋肉の収縮状態や筋肉が動く方法を正しく把握することが出来なくなります。故障の後、ランニングスタイルが変わってしまう人がほとんどですがこれは、組織の癒着が原因で中枢神経系に誤ったシグナルが送られるからでもあります。

 時がたつと更に癒着部が広がり神経を刺激し、しびれや痛みを引き起こします。ここまでくると、非常に治癒は困難で「治っていても痛みを感じる」という表現がされることがありますが、急性的な炎症や自覚されるような筋肉の張りがなくても痛みを感じ続ける破目になります。

どこから始めればよいのか?

 ではどこから手をつければ良いのか?ということですがこの負のスパイラルの始まりは筋肉のしこりです。先ずはこの筋肉のしこりを取り除くことから始まります。この筋肉のしこりですが、これもある意味では体に必要なものです。過度に負荷がかかった場所を固定し、いわば一時的に機能制限がかかった箇所にテーピングをしたり、ギプスで固定するのと同じことです。短期間であればこれで良いのかもしれませんが、これが長期にわたって続くと問題となります。

 次に筋肉のしこりと共に組織内に形成された癒着部へのアプローチも必要となります。筋肉内のしこりを取り除き、組織の癒着を取り除けば慢性的な故障は治ります。たとえ2年半続いた故障でも少しずつ治癒に向かいます。そうならないとすれば理由は単純です。次の3つのどれかに該当します。

練習がきつすぎる

アプローチする場所が間違っている

治療の頻度と強度が間違っている。

 より具体的な方法論に関しては次回に譲ろうと思いますが、簡単に解説していきます。1.練習がきつすぎることに関してはトレーニング全体の強度のみが問題となるのではありません。故障によって、距離を短くして強度を挙げたほうが良いもの、ゆっくりと長く走る方が負担が少ないもの、起伏のあるコースは避けた方が良いもの、カーブの多いコースは避けた方が良いもの、不整地は避けた方が良いもの、アスファルトは避けた方が良いもの、などなど様々です。私の場合は、ジャンプ系のトレーニングとショートインターバルは避けた方が良いタイプの故障が多く、同じ1キロ3分ペースで走るにしても1本目から1キロ3分で走ることは不安でも、3分半くらいから入って徐々に上げていき、最後の3㎞を9分05秒当たりで走るのなら大丈夫というパターンもあります。この辺りは熟練した指導者であっても現役時代その指導者が自分と異なるタイプの指導者であれば理解することが出来ません。私自身も自分と正反対の選手のことを理解するのは非常に困難です。体に聴くのが一番です。

 2点目のアプローチする場所が間違っているということですが、慢性的な故障は痛覚神経による影響で引き起こされるものがほとんどです。そうすると、筋肉のしこりと組織の癒着の存在する場所以外に痛みが出るケースが多くあります。組織の癒着が原因で中枢神経系は3次元空間における位置を正しく把握できなくなっているので仕方ありません。また複合的に痛みを引き起こしているケースも多々あり、私の場合は足底筋膜炎を治すのに、足底、ふくらはぎ、ハムストリングスの全てを治療する必要がありました。どこを治療してもそれなりに良くなりますが、3つ同時に治療しないとすぐに元に戻ってしまうという状態でした。

 3点目の頻度と強度ですが、治療の目的や方法によって強度と頻度を変える必要があります。この強度と頻度を間違えると故障を悪化させかねません。またトレーニングプログラムとも相談しながら決定する必要があります。これも最終的には体に聴くしかありませんが、ガイドラインを示すことは可能です。それでは次回はより詳論に入っていきます。

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