TEDのプレゼンを見て泣いた話。〜ゆたかさってなんだろう〜
私はそれほど涙脆い方ではないです。
でも、YouTubeでこのプレゼンを見て思わず泣いてしまいました。
それは、植松努さんの「思うは招く」。
この方は植松電機という会社の社長さんです。
北海道の産業廃棄物からのリサイクルのマグネットを作る会社だそうです。
でもそれだけではありません。北海道大学大学院の教授との出会いをきっかけに、宇宙開発して、ロケット作って打ち上げてしまいました。人工衛星も飛ばし、世界でも三つしかない無重力状態を作る実験装置も持っているのだそうです。プレゼンの中で植松さんはサラッとこうおっしゃいました。
「どれも売っていないから、自分たちで頑張って作りました」
子供の頃の宇宙への憧れや夢。
ロケットや飛行機が大好きな少年だったそうです。でも、学校の先生からかけられた言葉は
「どうせ無理、お前にできるわけがない」
この「どーせ無理」が人の自信を奪って可能性を潰してしまう恐ろしい言葉だと植松さんはおっしゃいます。
プレゼンの中で植松さんは問いかけます。
「高級車が手に入るのは金持ちだからでしょうか?」
そして答えます。
「いいえ。全然違います。この車が手に入るのは、金持ちだからではありません。この車を買うことができるのは、どこかで誰かが頑張って作っているからなのです。もっと良いものを作ろうとして研究して努力している人たちがいるから、売ってもらえているから、買うことができているだけのことなのです」
「お金が必要な夢、お金で買えるサービスは誰かにしてもらうサービスです。自分ができなければできないほど、人にしてもらうしかないので、どんどんお金がかかってしまいます。逆に、自分ができることがあればあるほど、してあげられることが仕事になるかもしれない、だから人間にとって素晴らしいことは、できなかったことができるようになることなのかもしれません。」
「どーせ無理」という言葉をなくそう、と
「どーせ無理」がなくなれば、良い社会がくる、と植松さんはおっしゃいます。
「生まれた時からあきらめ方を知っている人なんていない。」
「諦める為に生まれてきたわけではない。」
「失敗はより良くするためのデータにすぎない。」
「どーせ無理」と言わずに、
「だったらこうしてみたら?」
とみんなが言っていたらお互いの夢は叶っていく。
と。
夢なんか忘れちゃったなぁと思っていた昨今。
生活のために日々稼ぐ事だけに終始しているうちに擦り減って硬くなっていた何かが溶けていくような気がしました。
気付いたら自分の中でのゆたかさの象徴はお金で手に入れられる、「誰かにしてもらうサービス」ばかりになっていたかもしれません。
改めて、今、ゆたかさってなんでしょう?
植松さんの言葉が沁みます。
「お金で買えるものは、人からして貰えるサービスにすぎません。」
自分で作り出せる価値がどれほどあるのか。夢を追う事の大切さを語る植松さんの「熱」に心を動かされました。
私は写真を撮りに行くのが趣味です。近年は花火大会の写真をよく撮りに出かけていました。
思えば、花火とはなんと贅沢なものでしょう。
花火師さんが精魂込めて長い時間をかけて準備したものが、一瞬の輝きを残して夜空に消えてゆく。
それをまた、ものすごく多くの人が同じ空を見上げて歓声を上げる。
それぞれの人がそれぞれの事情や人生を背負ってその場にいるのでしょう。幸せで、満ち足りた人ばかりではないに違いありません。
けれど、その花火の時間だけは、同じ時間に同じ空を多くの人が見上げて、夜空に煌く「花火」という一点で共有している。
皆で、花火を見上げる時間。なんと贅沢なひとときでしょう。
写真は去年の大曲の花火大会(春の章)で撮ったのものです。
秋田の大曲の花火競技会の人出は75万人(夏)。新潟の長岡の花火大会で108万人の人出があったと言います。花火大会は元々、お盆の時期前後に慰霊や鎮魂、平和への願いといった意味を込めて打ち上げられるようになったものが多いようです。
長岡の花火大会の有名なスターマイン、「フェニックス」は、さらにこの地域を襲った水害や中越地震の震災の復興祈願とその時の支援への感謝のシンボルとして打ち上げられる花火として有名です。長岡ではその年の花火大会が終わってすぐに、即、翌年の大会への寄付が始まるのだとか。
「フェニックス」に込められた地域の人達の思いが、まさしく不死の火の鳥となって夜空に羽ばたくのを見ると、感動で言葉がでなくなります。
その、長岡の花火大会も中止が決定しました。1947年以降中止のなかった花火大会です。
そのほか日本各地の花火大会が、今年は軒並み中止です。
「大曲の花火」の大仙市は人口9万人弱です。そこへ75万人の観客が集まっていました。
中止になってしまったら、花火師さんたちは大丈夫でしょうか?
(今のところ大曲の花火は大仙市ホームページには8月29日予定とでています)
日に日に各地の花火大会の中止の知らせが届きます。
隅田川も中止。足立の花火も中止。横浜スパークリングトワイライトも中止。諏訪湖も、なにわ淀川も足利花火大会も中止…
心配していたら、日経新聞に出ていた記事を見つけました。
徳島の青年会議所の有志で在庫の花火を買い取って、無観客で打ち上げてライブ配信を行う一般社団法人を立ち上げたのだそうです。
その記事に載っていた法人を検索してみました。
こちらです。
通常では見られない打ち上げの映像や、真下からの映像、またドローンの撮影などをライブ配信するとのことです。そして、全国の花火師さんたちを応援するクラウドファンディングを設立するそうです。
コロナ禍で全国の花火大会がどんどん中止になってしまい、もう無理かもしれない…という気持ちでいたのですが、徳島の若手経済人の皆さんの
「だったらこうしてみたら?」
という声がしたように思いました。花火大会で一番お金がかかるのは、大きな花火の玉ではなくて、会場の整備や警備だそうです。
もしかしたら、これがデジタル世代の新しい花火大会開催のスタートにできるのかもしれない。
観客がいないからこそできる、昔にはなかったドローンのようなものを駆使して、もっと広く世界に配信する未来の花火大会のスタートになれるのかもしれない。コロナ禍で苦しい思いをしている世界中の人を励まし、勇気付ける花火の催しとして。
花火大会会場でわぁっと湧き上がる声にならない歓声と、思わず涙ぐんでしまうほどの美しい光の玉。その場にいる万を越す人達が共有する、あの胸がいっぱいになって言葉にならない瞬間をこれからも守り、支える為に、知恵を出して一歩踏み出した徳島の方達にまた一つ、教わったように思います。
「思うは、招く」
無理だという言葉を飲み込んで、「だったらこうしてみたら?」に変換できる知恵を。足りないところを補い合える仲間を。
私たちは本来持っているのではないでしょうか。
今できないことを一つでもできるようになること。もしかしたら、自分ができることが、誰かの夢をかなえるミッシングピースなのかもしれない。
そして皆で知恵を出し合って夢を叶えて行くことができたなら…
最後に。
ではその「だったらこうしてみたら?」が行き詰まったら、知恵を出すにはどうしたらいいのでしょう?
先述のTEDのプレゼンの中ででてきた、植松さんのおばあちゃんの言葉を引用します。植松さんのおばあちゃんは、樺太で、貯めたお金が紙になってしまった経験をして、小さい頃の植松さんにこう言ったそうです。
「お金は値打ちがかわってしまう。だからお金があったら貯金なんかしないで本を買いなさい。頭に入れなさい。それは誰にも盗られないし、新しいことを生み出すものなんだよ」
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