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【出産レポ】出産予定日1週間前に夫婦で妖精になった話。(前編)

※この記事は、2023年1月、計画無痛分娩で出産予定だった臨月妊婦(初産•33歳•神奈川県在住)の体験談です。あくまでも個人的な記録である点ご理解のうえ、お読みいただけたら幸いです。

明日でいよいよ予定日1週間前。〜夫発症〜

「なんか喉痛いわ。」

正月休み明け初出社から帰宅した夫が言った。コロナの3文字が頭に浮かぶも、風邪かも、インフルかも、と、この時点ではいろいろな可能性に希望的観測をこめて判断を先送りにした。ササッと夕食をすませて就寝。思えばこの時にしっかり隔離•感染対策を開始しておけば結果は違ったのかも。

朝方、夫が無事に発熱。うとうとしながら、これは本格的にヤバいかもなぁ、と思い始める。現在のガイドラインでは、重症化リスクの低い人はとにかく自主検査とある。あいにく自宅にキットを用意していなかったので、朝イチで私が駅前のドラッグストアに買いに行くことにした。

あらまあ見事な2本線!〜夫自宅療養1日目、妻濃厚接触0日目〜

というわけでコロナ禍になってまもなく丸3年、これまで幸い一度も感染することなく、濃厚接触者になることもなく過ごしてきた私達にも、ついにこの時がやってきてしまった。

夫、陽性。私はこの時点では無症状で陰性。濃厚接触者臨月妊婦が無事に爆誕した。

さて、これからどうしたものか。選択肢はふたつ。陽性の夫の看病をしつつ自宅に留まるか、車で10分の実家に避難するかーー。すまぬ、夫よ、臨月妊婦の選択は圧倒的に後者です。というわけで即、母親に連絡。

もともと産後は少しの間実家にお世話になる予定だったため、このまま出産〜入院〜退院としばらく自宅に帰れなくなる可能性も考え、脳内フル回転で準備をした。のこりの洗濯物を洗濯機にぶち込み、冷蔵庫の食材をとりあえず冷凍庫にぶち込み、用意していた陣痛バッグ&入院バッグ(※)を最終チェックした。

※出産時およびその後の入院に必要なものをまとめた荷物を、妊婦界隈ではこう呼びます。

母と一緒に近所のドラッグストアで夫用の自宅療養物資を調達。熱が上がってきて辛そうな夫を残し、怒涛の勢いで自宅を後にした。ごめんよ、生き延びてくれ…。

自室にこもって過ごす。〜夫自宅療養2日目、妻濃厚接触1日目〜

実家に戻ったとはいえ、濃厚接触者臨月妊婦、両親との接触を極力避けるため、自室にこもって一日を過ごす。まさか産前からこんなに両親にお世話になるとは。とほほ。でも本当に、ありがたい。

もともと出産に備えてこれといった予定も入れていなかったので、荷物の整理などをしつつ、最後の妊婦ライフをだらだらと過ごす。

県のガイドラインによれば、最終接触から2日目、3日目に陰性がでれば自宅待機解除とある。この日の朝も検査結果は陰性、症状なし。ちょうど翌々日にかかりつけの産院での健診を予定していたので、このままあと2日逃げ切れば何事もなく健診にもいける……と勝算がみえた。

夫の方はカロナールを服用しつつも、熱が上がったり下がったりでしんどそう。立ち会い出産を予定していたが、そのためには陰性証明が必要だった。夫の回復が先か、陣痛が先か。なんとか立ち会えますようにと願った。

1日3食自室に運んでもらい、洗濯もお任せの日々。

嫌な予感。〜夫自宅療養3日目、妻濃厚接触2日目〜

この日の朝も検査結果は陰性。明日も陽性が出れば隔離生活ともおさらば…。

ところが夜になって、なにやら喉が痛い。これは、ひょっとすると、ひょっとするかもしれない…。嫌な予感を抱えながら、眠りにつく。

予感は的中。〜夫自宅療養4日目、妻自宅療養1日目 ←new!〜

朝一で抗原検査。出てしまった、陽性。まあ正直、夜寝ているときから熱が上がってきている感覚があったので、覚悟はしていた。濃厚接触者臨月妊婦から陽性臨月妊婦に昇格である。

予定日まであと4日。とにかく今陣痛が来たらどうなるのか、それが一番の気がかりだった。ネットで検索しても、妊婦が陽性になると、かかりつけ医では出産できなくなるとか、総合病院で帝王切開になるとか、たらい回しだとか、色々と不安になる体験談が出てくるばかりだった。

恐る恐る産院に電話をしたら、電話口の助産師さんは思いのほか淡々としていた。「明日予定していた健診は一旦キャンセルして、自宅療養期間が終わったら改めて予約してくださいね」とのこと。陣痛が来たらどうなるのか聞いたら、そのときは隔離しながらにはなるが予定通り受け入れ可、とのことだった。よかった、これでまずはひと安心、首の皮が繋がった気分だった。

コロナの症状のほうは、喉の痛みと微熱のみで今のところ軽い。ただし妊婦は、症状が軽くても陽性者登録のために発熱外来を受診する必要があった。この日は祝日で医療機関も休診のところが多かったので、明日朝改めて予約を試みることにした。

連休あけの発熱外来。〜夫自宅療養5日目、妻自宅療養2日目〜

発熱外来の予約は「当日の朝、電話予約」という病院が多かった。この日は連休あけで、世間では第8波が騒がれていたので、予約が殺到しそうだなとは思ったが、想像以上だった。

目星をつけていた近所の病院に、予約開始時間と同時に私と母とで同時に架電するも、そもそも回線が繋がらない。ようやく繋がったかと思うと「本日の受付は終了しました」。さながら超人気コンサートのチケット争奪戦である。諦めずに他の候補もあたり、幸い3〜4軒目で予約をとることができた。

長いコロナ禍、今までどこか他人事のような感覚がずっとあったけれど、やはり自分が陽性者になってみると、改めて医療従事者の皆様には本当に頭が上がらない。車に乗ったままの窓越し問診で、看護師さんは屋外から「寒いね〜」といいながら和やかに対応してくれた。妊娠39週であることを伝えると、驚きながらも最後は「がんばって、元気な子を産んでね!」とガッツポーズで見送ってくれて、ちょっと泣きそうになった。そちらこそ、どうか無理なくがんばって、日々の対応本当にありがとうございます、と心の中で思った。

こうして無事に医療機関経由での陽性者登録が完了。一昨日を発症日とし、5日後までを自宅療養期間とするように指示をもらって帰宅。あと5日、どうか我が子よ、腹の中で待っていておくれ。

陽性者ライフ。〜夫自宅療養6日目、妻自宅療養3日目〜

陽性者登録が済んだので、この日から毎朝LINEでの健康状態確認がはじまった。一度保健所の人から電話があって、健康状態などを聞かれた。

妊婦が罹患すると、服用できる薬に制限があるというのが厄介と言われているが、幸いにも症状は軽症だった。熱は最初の2日間に37度前後でいったりきたりしたのみで、それ以降はすっかり平熱。喉の痛みと咳のみが続いた。11月に4回目のワクチン接種をしていたのが良かったかもしれない。

夫はだいぶ症状も落ち着き、在宅で仕事復帰する。

今なら、圧倒的に徳森くん。〜夫自宅療養7日目、妻自宅療養4日目〜

風邪の治りかけのような咳と鼻詰まりの症状が続くものの、ほぼ通常運転。妊婦生活中に引きこもりのトレーニングを積んでいたので、暇な時間も意外と苦なくやり過ごすことができた。

捨てずに実家に残していた青春バイブルこと矢沢あい先生の漫画を読んで過ごす。今読むとキャラやセリフに違った深みを感じるので面白い。高校生の頃は、はちゃめちゃで才能あふれる俺様キャラのジョージが好きだったけど、今は優しくて一途でニュートラルな思考の持ち主のクラスメイトの徳森くんに、圧倒的一票…。

出産予定日。〜夫自宅療養解消、妻自宅療養5日目〜

出産予定日を迎えた。腹の子は相変わらずよく動き、まだ出てくる気配は無い。1週間前までは「早く出ておいで」と体操やウォーキングに励んでいたのに、今は「まだ出てこないで」と念じている。勝手な親でごめんね。

夫は昨日までで自宅療養期間終了。ドラッグストアで改めて抗原検査をし、無事に陰性証明をもらうことができた。

私の自宅療養期間は明後日までなので、改めて3日後に産院を予約をしていた。もともと計画無痛分娩で産む予定だったので、予定日を超過しての健診となれば、おそらくそのまま入院して出産の流れになるだろうな、と思った。

そこで夫と相談し、明日いったん自宅に帰ることにした。このタイミングを逃すと、退院まで自宅には帰れないし、下手すれば夫にも会えないかもしれないから。

一時帰宅するも、ついに…!〜妻自宅療養6日目〜

朝からズーンと腹痛があった。けれど気にせずいそいそと荷物をまとめていたら、昼過ぎ頃、おしるし(※)があった。

※出産の兆候とされる、少量の出血のこと。すぐに陣痛が始まることもあれば、数日後になることもあるらしい。

自宅に帰るモードだった私は、気づかなかったことにしてしまいたい気持ちをぐっとこらえ、自分ひとりの体じゃないんだからと、ありきたりなフレーズを唱えながら、産院に電話した。

助産師さんと相談した結果、まだ陣痛らしき規則的な痛みは来ていないことと、陽性者の今入院すると隔離になってしまうことをふまえ、もう少し様子を見ることになった。

夕方、母に車で送ってもらい自宅に戻る。しかし先程からどうにもやはり、腹が痛い……。念のため陣痛アプリで痛みの間隔を測りながら、買い物に出ている夫の帰りを待った。

しばらくして帰宅した夫に、「陣痛、始まってるかも。」と伝える。久々の2人での夕食に、気合いを入れて料理しようと食材を買い込んできてくれた夫は、状況についていけない様子(笑)。

規則的な痛みの合間で、行きしなに「2人で食べな〜」と母が買ってくれたプリンを意地で食べる。そうこうしている間に明らかに10分間隔(※)を切ってきたので、再度産院に電話をした。

※規則的な痛みの間隔が10分を切る=いわゆる陣痛の開始。初産婦の場合はこのタイミングで病院に連絡するように指示されることが多い。

こうして自宅滞在時間数時間にしてプリンだけ食べた私は、またしても母に迎えにきてもらい、ついに病院に向かうことになった。

陽性妊婦、果たしてどうなる…!

↓後編に続きます。


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