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小説 万テチョライフでレベルアップ~よりそう Season2 ~ 21


「じゃ、俺の自己紹介を始める」

立ち上がって、机に手をつきちょっと前屈みで話し始める部長。

「ま、知ってると思うが、 出海 勝(いずみ まさる)だ。
もうすぐ55になる。生え抜きっていうのもおこがましいが、この前、勤続30年を祝ってもらった感じだ。」そういって、ちょっと照れくさそうに鼻の上をかく。

「今でこそ部長の肩書きをもらっているが、最初10年くらいは同期の中でもほんと下の方で、先輩方からいつ辞めるかみたいな話もされていたらしい。」 そこで一拍をおいて

「知っているかもしれんが、北海道にリモート拠点を作ることになって、そこに飛ばされた。当時は動機たちに冗談半分左遷されたとか言っていたけど、結果的にそれがよかった。そこで、先輩の人達に基礎からもう一回叩き直してもらえて、そのおかげで少しずつ結果みたいなのが出てきてな。

それからいろいろ任せられるようになって、ま、大体めんどいことがまわされてきたが、それをこなすことで、結果今に至っている。」

一瞬部長は自分の黒革の手帳に目を向ける。部長の手帳スタイルは北海道で磨かれたのかもしれない。 

「君たち3人みたいに、専門でこれやってたと言えるほどはっきりしたキャリアはないが、結果的になんでもやってきた。そのおかげで今がある感じだ。完全に結果論で、キャリアプランなんてものもない時代だったからというのもあるが、こんなスタイルでも部長にまでなれるってことだな。」

そう言って笑う部長。いつもの安定感というかゆるぎなさはやっぱり過去の経験が大きいんだなぁと感じる。

「と、いうわけで、得意なことは全部。なんてのは嘘で、とりあえずやってみることかな。やりながら考えることが得意だ。逆を言えば初めて見なくちゃわからんとも思っている。ここら辺は東郷と似ているかもしれん。最近は事前にデータを見ることも覚えてきたから、そのあたりは赤杉のサポートを頼む。」

やっぱり頼りにされている先輩s。すごいなぁ。

「そして枠にはまらないアイディアと行動力、それを人と一緒に成し遂げる力。これが新規ビジネスの成功条件の一つだと思っている。雲川期待しているぞ」今までより力強い言葉が、自分に投げかけられた。

枠にはまらないアイディアと行動力? それを人と一緒に成し遂げる力?
そんなものあったっけ、おれ。頭が真っ白になっている間も、部長の話は続く。

さらに前のめりに、体を俺たちに近づけてささやくように、だけど力強く語り掛ける部長。

「今回は、全面的に俺のやりたいようにやっていいといわれている。ITとかそんなことに限らずだ。必要な金や技術、人材なんかは都度都度集めてくる。まずは、この4人で最強のビジネスプランを考えるぞ」

聞いていた先輩も多分同じ。いま、俺めちゃくちゃやる気に満ち溢れている。

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